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井口薬局

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健康のはなし

生活養生 ~運動編

店頭でお話しする養生法の中で、運動に関するものをまとめて解説いたします。

【スクワット】

①肩幅より少し広めに足を開き、つま先を約30度外側に開く。後ろにイスを置くと安全。

②背筋を伸ばし、膝がつま先より前に出ないようゆっくり(お尻を後ろに引くように)腰を落としていく。

息を止めずに深呼吸するペースで5~6回繰り返す。

*イスに座り、立ち座り動作を繰り返してもよい。

【開眼片脚立ち】

①床につかない程度に片脚を上げる。

②左右1分ずつ、1日3回行う。

*つかまるものがある場所で行う。

【踏み台(階段)昇降】

①踏み台を利用して昇降を繰り返す。高さ10~20cm程度で、話をしながら10分続けられる程度の強度で行う。

*階段の一番下で昇降してもよい。

【腸腰筋の強化】

①いずれも動作はゆっくり

②上にあげて5秒静止

 

人間は動物なので動けなくなると生きていけません。

体を動かす運動器(筋肉・関節・骨)を丈夫にしておくことは基礎代謝アップにより冷えや肥満・糖尿病の予防に、血流促進により心臓や脳機能の改善に、筋力アップにより関節炎・骨粗鬆症等の老化防止に、さらに転倒→寝たきり→認知症の悪循環防止にも役立ちます。

【行かないでのポーズ】

①四つん這いになり、左腕と右足をゆっくり上げ5秒静止。

これを左右10回ずつ繰り返す。

ちょっとキツいですが基礎代謝がアップし脂肪が燃焼しやすくなるとともに、体の歪みが矯正され、内臓の働きが改善されます。

【肛門締め運動】

①姿勢良く立ち、肛門(と膣)をキュッと締め、そのままゆっくり5数えてからゆるめる。

締め方は排便をガマンするような、あるいはお尻にペンを挟んで落ちないようにする感覚で。

1セット10回、1日3~5セット行う。

②さらに下図のような姿勢でも行う。




*人に気づかれずにできるので頻繁に行う。

肛門括約筋を締めると大腿筋・腸腰筋・骨盤底筋が動くので尿失禁・過活動膀胱・前立腺肥大・内臓下垂・子宮脱・痔などの予防効果があります。

【ウォーキング(インターバル速歩)】

①正しいフォームは 「背筋を伸ばし」「あごを引き」「25mほど先を見ながら」「普通の歩幅より足ひとつ分くらい大きい歩幅で」「ひじを軽く曲げて腕を後ろに振るように」「かかとから着地」するように。

②ゆっくり歩きは自分の最速歩きの50%、早歩きは自分の最速歩きの70%程度で、ゆっくり歩きと早歩きを3分間ずつ計5(~10)回繰り返す。

*最初は2分間隔で始めてもよい。

*平地を一定速度で歩いても運動にならない。

上り坂…山に向かってのウォーキングは有効。

通常のウォーキングでは望めない筋力増強(特に高齢者に有効)・持久力向上・カロリー消費増加 とともに、骨密度の向上や高血圧・糖尿病などの生活習慣病改善効果があります。

【あいうべ体操】




①図のように「あ~、い~、う~、べ~」と順に口周囲の筋肉と舌を動かす。

声は出しても出さなくてもよい。

②1回につき5秒程度で、1日30回(約3分)を目安に行う。

*あごを開けると痛む場合は回数を減らすか 「い~、う~」のみにする。

小学校で実践したらインフルエンザに罹る児童が激減したという体操。

理由は、口周囲の筋肉が鍛えられることで自然と口が閉じ、鼻呼吸がしっかりできるようになるためです。

口呼吸では空気中の塵や雑菌を除去できないうえ、口腔内雑菌が増えることにより様々な病気の原因になります。

味覚臭覚障害・いびき・集中力や思考力低下・頭痛・肩こり・口臭・歯周病・ドライマウス・咽痛・鼻塞・後鼻漏・慢性鼻炎・咳・気管支炎・肺炎・胃炎・腎臓病・リウマチ・アレルギー疾患・不眠・倦怠感などのリスク低減にはまず鼻呼吸が大切です。

【唾液腺マッサージ】

①図のように自分の指を使って耳下腺、顎下腺、舌下腺をマッサージする。

*毎食前、就寝前、起床時などに行うとよい。

唾液には各種酵素・免疫物質・抗菌成分等が含まれ、消化促進・粘膜保護・虫歯防止・抗菌殺菌・老化防止など体にとって重要な役割を担っています。

したがって加齢・ストレス・起床時・口呼吸などが原因で唾液が減少すると、口腔内や胃粘膜だけでなく全身に悪影響を及ぼします。

是非、あいうべ体操とセットで実践してみて下さい。よく噛むことでも唾液は出ます。

【ミニ半身浴】

一般的な半身浴は時間がかかりすぎたり、人によっては疲れたり、かえって寝にくくなったりで、誰にでも勧められるものではありませんでした。今回は短時間で疲れない、比較的誰でもできるミニ半身浴を紹介します。

冷えやむくみがある方、体のだるさが取れにくい方、普段汗をかかない方、血行が悪い方、天気が悪いと調子悪い方、鼻炎が治らない方、水分を取り過ぎている方には特にオススメです。

①入浴時間は…

「短時間で汗をかいて出る」ことを目標にするので15分と決める。汗が出るようになれば10分でよい。

最初のうちは汗が出なくても15分で出ること。

②温湯の温度は…

少し温かめにする(ぬるめ、38℃では寒い)。

途中でお湯を加えるか追い炊きして加温してもよい。

③浸かる位置は…

浸かるのは脇の下、バストトップあたりまで。

肩と腕は濡れると汗が出にくくなるので決して濡らさないこと。掛かり湯は腰から下だけに。

汗をかいたら肩まで浸かってよい。

④風呂に入る前は…

熱いお湯を一口飲んでおく。

(胃を温めて発汗の準備)

⑤入浴中は…

副交感神経を優位にするためのんびりすること。

肛門締め運動・あいうべ体操・唾液腺マッサージを。

正しい水分の取り方

1日に水を2リットルは飲まなければならない…と信じていませんか? 成人の場合、体内の水分量は体重の60%程度ですが、このバランスを崩すと、つまり多すぎても少なすぎても健康を損なうことが報告されています。

《水分の基礎知識》

① 水分には体温調節・血液粘度を調節・老廃物を排泄・体液成分となる などの役割がある

② 汗・呼気・大小便などから体外へ出ていく水分量は1日に約2500ml ⇒ 同量を補給する必要あり

③ 食事の固形食物や汁ものの水分で約1000ml摂取、代謝により体内で約300mlが生成される

④ よって一般的な身体活動時に必要な、液体としての水分量は1日に約1200mlとなる

⑤ 発汗量・尿量が少ない場合は必要量は減少する(逆に発汗量が多い場合は必要量は増加する)

《必要以上に水分を取り過ぎると》

水分は無制限に摂ればよいというものではありません。もともと水には熱を奪う特性があり、1日に必要とされる量以上に摂りすぎると体内に溜まり、内臓を冷やしたり、胃腸障害(食欲不振・消化不良・口内炎・急性胃腸炎・下痢など)を起こしたり、心臓(心房細動のリスクが増加)や腎臓に負担をかけたりします。また冷水を摂っている場合、温かいおしっこを出しているということは、体から熱が奪われているということに他なりません。

日本の気候風土では(雨天時に洗濯物が乾きにくいのと同様に)多湿時には体内の水分は滞りがちになります。そんなときにせっせと水分補給をしていては先に述べたリスクが高まるばかりです。

東洋医学では、胃を冷やし胃に水が溜まると、咳・痰(ゼンソク)が悪化したり、鼻水鼻づまり(鼻炎)・耳鳴り・めまい(メニエル)・頭痛・むくみなどを起こす原因になると考えますし、夏バテも、胃腸の働きが弱くなり、食物の消化吸収が低下し、身体が栄養不足になるために起こることが多いので要注意です。

「過ぎたるは及ばざるがごとし」と言われるように、身体によいものでも摂り過ぎることは摂らないことと同じくらい害になることを忘れないで下さい。

《水をめぐる間違った常識》

「血液ドロドロをサラサラに、血栓を防止する」

水には、血液が固まる(血小板やフィブリノーゲンが凝集して血栓が形成される)のを防ぐ働きはありません。たしかに脱水症時の水分補給は血液の凝固リスクを減らせますが、普通の人が必要以上に水分を摂取しても意味はありません。

「便秘がなおる」

水で便秘が治ったり、腸内環境が改善されるということはありません。大量の水分で軽い下痢状態を起こして排便できる可能性はありますが、消化と腸内環境の面からは逆に不利になります。

《水分の上手な摂り方》

① 一度に多量の水を摂らず、こまめに補給する

…1日にコップ5~6杯で十分です(おくすり服用時の水やお茶、コーヒーなども含む)

② 唾液(血液濃度を調節・口渇を軽減する作用あり)を混ぜながら飲み込む習慣を心がける

③ 水分は常温~40℃前後で補給する

④ 冷水はクチュクチュしてからゆっくり飲み込む(口内を冷やして、胃を冷やさない)

⑤ 食事中の水分は控え、食後しばらくしてから摂る

⑥ 気温が下がる夕方以降の水分は控えめにする

⑦ 脱水症状を起こしやすい高齢者・衰弱者は寝る前と起床時にも水分を摂る

*アルコールは水分とは考えません

アルコールには利尿・発汗・脱水作用があるため、 摂取により逆に体内の水分が不足してしまいます。

(水分と一緒に摂れば脱水症状予防になります)

*水分を積極的に摂る必要がある方も

・腎臓結石・尿路結石などの持病がある方

・尿量増加で効果が期待される薬を服用している方

・脱水症状を起こしやすい乳幼児と高齢者

(…ただし上記の摂り方がオススメです)

熱中症予防に水分摂取が最も大切であることは間違いありません。ただ、間違った水分の取り方にはリスクやマイナス面があることを知っておいていただきたいのです。

あとは冷房や風通しで湿度を下げて発汗しやすくすることと、自分が水分を取り過ぎているのか不足しているのかを見極めることが大切です。見極めのひとつの方法を紹介しましょう。舌が白くぼてっとしている、ひどい場合は舌辺に歯型のような痕があるのは体内に余分な水分が多いとき(水分の取り過ぎ)です。ご注意下さい。

(参考資料)

以下は、英国の医学雑誌「ランセット」に掲載された“飲水狂時代”からの内容抜粋です。

・1日2リットルの水分摂取を勧める医学的根拠はない

・運動選手の水分過多は逆に危険(低ナトリウム血症)

・水分摂取による便秘解消効果はない

・飛行中の水分過多は骨盤や下肢の静脈に負担増となる

・水分摂取の押しつけは90年代初期から増幅されてきた誤った情報である

・のどが渇いたら飲みすぎに気をつけて飲むことが自然…摂取量を計算して水を飲むのはやめよう

唾液の効用

我々人間は食物を摂取し、消化・吸収・代謝することにより、細胞・血液・骨・筋肉・エネルギー等を作り出し、生命を維持しています。まさに「食は命なり」です。食は「食事内容」と「食べ方」が基本ですが、つい忘れがちな「食べ方」にこそ健康づくりのポイントがあります。

今回は食べ方の基本である「唾液を最大限活用する」ことについて考えてみましょう。

「唾液に含まれる成分とその働き」

・リパーゼ、アミラーゼ他(…消化酵素)

・ペルオキシダーゼ(…抗酸化酵素)

・リゾチーム(…抗菌作用のある酵素)

・パロチン(…老化防止ホルモン)

・ムチン(…粘膜保護)

・ラクトフェリン(…抗菌・整腸作用)

・アルブミン(…口内乾燥防止)

・カリクレイン(…血液循環改善)

・IgA,G,M(…免疫抗体)

唾液にはこのように素晴らしい働きがあるにもかかわらず、多くの人はじゅうぶんな活用ができていません。

「唾液を最大限活用するのに必要なこと」

①よく噛む

唾液腺を含む腺組織は筋肉に裏打ちされているので、よく咀嚼して顎や舌の筋肉を動かすと、唾液の分泌は促されます。さらに噛むことによって脳を刺激し、血流や代謝が高まるので、脳の老化を防ぐ効果もあります。昔の人はよく噛むことが身体に良いことを経験的に知っていたのでしょう。

②水分の摂り方に注意

胃液が薄まると消化能力が落ちて胃が弱るとともに、その後の胆汁や膵液分泌にも悪影響を及ぼすので、食事の前や食後2時間程は水分をできるだけ控えましょう。また味の濃いものを食べ過ぎると体が余計に水分を欲しますので注意しましょう。

①②ができないと…よく噛まないと食べ物がそのまま胃に入り、消化に手間取って(水分過多により胃液が薄まる)胃が弱るとともに、充分な消化がなされていない未消化物のまま小腸に行くので栄養の吸収が悪くなります。未消化物は腸内環境を悪化させ、悪玉菌を増やし腐敗物質を産生しやすくなります(便秘や下痢、血栓生成、免疫力低下、アレルギー体質、肝障害、高血圧、発ガン等の引き金に)。

③酸味を利用する

料理の中にレモンや酢、梅干しなど、少し酸味のあるものを加えると唾液分泌が促進されます。

④リラックスして食べる

唾液腺は自律神経支配で、緊張すると交感神経が優位になって唾液の分泌量が減り、逆にリラックスすると副交感神経が優位になって唾液の分泌量は増えます。家族団欒、ゆったりくつろいで食事をという昔からの言い伝えはとても理にかなっています。

東洋医学には「痰は吐くべし、唾は飲むべし」という言葉があり、腎液である唾液は免疫向上や老化防止に役立つと考えます。1日3回、年間1000回の食事でしっかり唾液を出せば体質は変わります。
①~④に注意して強い体質づくりを目指しましょう。

参考)努力しても唾液が出にくい人
・服用薬の影響がある(抗うつ剤、鎮痛剤、利尿剤、抗パーキンソン剤、降圧剤などの副作用)
・老化、口や顎の筋力低下がある(腎虚や陰虚の進行)
…これらの場合の対処法については店頭でご相談下さい。

噛むということ

『唾液の効用』では、食養生の中で唾液を活用した食べ方の大切さについて述べましたが、今回は唾液を出すための必須条件でもあった「噛む」ことについて、もう少し考えてみましょう。

我々は食物を噛み砕き、消化しやすい形にして胃に送り込んでいます。消化の第一歩となる重要な行為といえますが、噛むことにはそれ以外にも様々な効用があります。それをまとめると…「ひみこの歯がいーぜ」となります。

「ひ」肥満を予防

…脳の満腹中枢が働いて、食べ過ぎを防ぎます

「み」味覚の発達

…味わうことにより食べ物の味がよくわかります

「こ」言葉の発音明瞭

…口周囲の筋肉が動くので表情が豊かになり発音がきれいになります

「の」脳の発達

…脳細胞を活発化するので子供の知育を助け、高齢者の認知症を予防します

「は」歯の病気予防

…唾液が口内を殺菌して虫歯や歯周病を防ぎます

「が」ガンを予防

…唾液中の酵素が発ガン物質の毒性を低減します

「い」胃腸の働きを促進

…唾液中の消化酵素や粘膜保護成分が働きます

「ぜ」全力投球できる

…歯を食いしばると集中と全力投球ができます

逆に、噛むことができないと

・消化力が低下して胃に負担がかかり、腸内環境が悪化する

・唾液の効用が得られず、虫歯や歯肉炎になりやすかったり全身の免疫低下が起こる

・顔の輪郭が歪んだり、肩こり・頭痛・腰痛・顎関節症などの原因になる

・発音がしづらくなる

・集中力が低下する

といった問題が生じます。

しっかり噛むようになるために、以下のことに気を付けましょう。

① 一度食べたら箸を置きましょう

② 加工食品や軟らかいものばかりにならないよう気をつけましょう

③ 噛みごたえのあるものを食べましょう

④ 食事には時間をかけるようにしましょう

⑤ 噛むことにより唾液を出すよう意識しましょう

⑥ 自然の恵みを中心に食べましょう

⑦ 食事中の水分を控えて、食物を流し込まないようにしましょう

⑧ 虫歯やかみ合わせ、歯周病に気を付けましょう

特に子供には早くから噛むしつけをすることにより、集中力を高め、アレルギー疾患や下痢・便秘を防ぐことができます。噛むことは心身を強くするので、是非頑張っていただきたいと思います。

ロコモ対策

最近、腰や膝が痛いので運動を心がけているという話をよく聞きます。体の土台である骨を支え動かすのは筋肉なので、痛みや運動障害には骨強化とともに筋肉強化が不可欠なのですが、間違ったやり方を続けている方も多く見受けられます。そういった方に私は店頭で以下のようなお話をしています。

①基本はインナーマッスルを鍛える運動です

インナーマッスルの一つである腸腰筋(腸骨筋+大腰筋)は背骨と腰の骨、そして太ももの骨をつないでいて、姿勢の維持や下半身を使った動作の制御に重要な役割を果たしています。

脚を根元から動かすような動作を行えば腸腰筋を鍛えることができて、正しい姿勢が無理なくできるようになりますし、足腰膝の強化にもなります。オススメは「スクワット」「片脚立ち」「踏み台昇降」の3つです。

②運動は毎日続けることが大切です

インナーマッスルを強化するには、週1~2回のトレーニングではなく、毎日少しずつ続けることです。ただし、痛みがとれにくい方には運動を中止することもあります。運動しないと動けなくなるという焦りで真面目に運動することが、かえって痛みを長引かせてしまうからです。この場合は、負担のかからない筋肉運動だけを続けるようにします。

さらに、筋肉強化のために欠かせない点が二つ…。

③運動と並行してタンパク摂取を欠かさないこと

タンパク質(アミノ酸)は筋肉や血液、骨、関節、細胞の主要原材料です。常に新しいタンパク質が必要な状況で、摂取不足のまま運動しても筋肉がつくことはありません(痛めるだけです)。

④血液循環を常によくしておくこと

血液循環が悪いと、筋肉や関節の新陳代謝が低下します。損傷や疲労の回復を早めるためにも、体の冷えに気をつけて、温性食品や漢方薬で内臓をしっかり温めておくことが大切です。

人間の体は、血液も筋肉も関節も骨も内臓も常に新しいものに入れ替わっています。姿形は変わらなくても細胞レベルでは1年前とはほとんど別人で、これは年齢に関係なく生きている限り変わりません。

したがって、努力すれば必ず弱い箇所を改善することができます。焦らず正しい方法を継続すれば、痛みや運動障害は必ず軽くすることができるのです。

こういった「運動」+「タンパク摂取」+「血流改善漢方」の組み合わせは、低体温や低代謝・免疫低下改善にもたいへん有効です。また、不定愁訴が多い方、むくみや脂肪を減らしたい方にも必須の健康法といえます。適切な実践法については個人個人異なりますので店頭でご相談下さい。

糖尿病は筋肉の病気?

病気や寝たきりにならず、安らかに生を終えたい(ピンピンコロリ)というのは誰もが願うことですが、そのヒントのひとつが 「宇宙」 にあります。

我々は平素、地球の重力を受けて生活しているわけですが、宇宙空間では重力がないため ①骨 ②筋肉 ③血糖 ④心臓 に大きな変化が現れます。

①宇宙では重力という負荷がかからないため、骨は急速に減少し、2週間で50才女性は65才に、30才男性でも10ヶ月で75才の骨量になります。

②筋肉も1日1%ずつ萎縮・退化するため、筋力が低下するとともに

③筋肉運動に必要な糖分(7割が筋肉、2割が脳で使用)が不要になり血液中に溢れるため、極度の高血糖すなわち糖尿病になります。

④重力に抵抗して血液を送り出す必要がないため心臓(心筋)も弱ってしまいます。

古川聡さんも国際宇宙ステーションから半年ぶりに地球に帰還した直後は 「筋肉の衰えのため歩けない」 「転倒すると骨折する」 「地上の重力に体を慣らすため1ヶ月半のリハビリが必要な」 状態だったそうです。…これがなぜヒントになるかというと、現代人の生活形態に酷似しているのです。

日本では戦後の復興から高度成長とともに生活様式が変化し、日本人はかつてないほど豊富な栄養を摂取するようになりました。その結果、飽食の時代と言われるようになり、糖尿病患者は急増しました。 つまり、これまでは飽食…高カロリー食が糖尿病の原因だと言われ続けてきたわけです。

ところが近年は状況が変わってきており、今の成人1日の摂取カロリーを昭和50年と比較すると2230→1880キロカロリーと350キロカロリーも減少しています。これは驚くべきことに終戦直後の昭和21年と同水準です。

摂取カロリーは減りつつあるのに糖尿病は昭和25年の50倍に、そして高脂血症、高血圧などの生活習慣病も増え続けています。このような状況になっている理由はただひとつ、 現代が人類の歴史の中で最も体(筋肉)を動かしていない時代だからです。摂取カロリーが減っているにもかかわらず、消費カロリーがそれ以上に低下しているため高血糖になるのです。現代人が昭和50年の食事を続ければ、誰もが1年で15kgも肥ってしまいます。無重力空間で宇宙飛行士が経験する体の変調が、今まさに現代人の体で起こっているのです。

筋肉を使わないと無重力空間と同様に骨と筋力が低下し、足腰や心臓(心筋)が顕著に弱ります。また肥満から高血圧・高血糖・動脈硬化を起こしやすくなります。宇宙でなくとも、3週間寝たきりで筋肉を使わずに過ごすと心肺機能は30%、体力も30年分低下しますし、血流悪化により脳活動も低下します。

人間は知能が高度に発達していますが基本は動物なので、動けなくなると生命を維持できなくなる運命にあります。人類はいまだかつてないほどに動かなくなっており、それにより自滅しようとしているといっても過言ではありません。いまや肥満・糖尿・高脂血症・高血圧・脳梗塞・心筋梗塞は生活習慣病ではなく 「生活不活発病」 だと言えるでしょう。

*リズミカルな筋肉運動を毎日 継続して行いましょう!

(スクワット・階段昇降・片脚立ち等)

*足腰を鍛えると心臓を強化できます!

*階段を見たら運動できる、ありがとうと感謝しましょう!

*座っていないで立って動きましょう!

*立つと+20%、歩くと3倍エネルギー消費アップ!

*こまめに動くだけで800キロカロリーに(非運動性熱産生)!

*糖質とタンパク質と運動はセットで必要です!

*脂質だけは頑張って減らしましょう(和食中心)!

*糖尿病は筋肉の病気だと考えましょう!

治療薬で血糖・血圧・コレステロール・中性脂肪の検査数値を下げる(進行と最悪の状況を防ぐ)ことはできますが、血液や血管の状態が改善できたり健康になったわけではありません。健康で長生きを実現するために 「こまめな運動」 「正しい食事」 「内臓・血管を守る自然薬」 はセットで実行しましょう。

なお、足・腰・膝に障害がある場合は別メニューになりますのでご相談下さい。

命を守る食養道

我々は食物を消化・吸収・代謝することでエネルギー(気・血・津液・精)を生み出し、新陳代謝を行っています。したがってその舞台である消化器系を整えることは健康を維持するうえでとても重要です。

そもそも消化には、胃液・胆汁・膵液などの消化液(消化酵素)による化学的消化と、咀嚼や消化管運動による機械的消化があり、どちらか一方に問題があるだけでも消化不良や逆流性食道炎・胃腸炎・潰瘍・便秘・下痢、さらには腸内環境が悪化してポリープや免疫低下を引き起こす可能性があります。

以下の養生法で主に機械的消化を正していけば化学的消化の働きも自然と向上し、消化力自体がよくなるでしょう。

「命を守る食養道」 ~胃腸を健康に保つ方法

①早食いせず、よく噛んで食べる

しっかり噛むことで胃の働きを助け、満腹中枢を刺激して食べ過ぎを防ぎます。また唾液分泌が増えるので、消化吸収・食中毒予防・発ガン予防ができます。

②味の濃いものを食べ過ぎない

塩分・糖分・味付けが濃いとのどが渇き、水分摂取が増えて消化力が低下するとともにむくみやすくなります。香辛料や薬味を使い、薄味を心がけましょう。

③食事中は水分を控える

胃液が薄まり消化力が低下します。水分は消化吸収に影響しない時間に摂ること。普段からがぶ飲みせず、唾液を混ぜて飲み込むよう心がけましょう。

④酸味を利用する

料理の中にレモンや酢、梅肉を加えたり、醤油の代わりにぽん酢や酢醤油を使うと唾液分泌が増えます。

⑤調理は硬軟取り混ぜる

軟らかいものばかりだと噛まずに飲み込み、かえって胃に負担をかけます。食材には噛むことを意識できる大きさと硬さが必要です。

⑥食事のバランスは3日間で考える

タンパク:炭水化物:野菜海藻=1:1:2~3が基本ですが、1食では難しいので3日間でこの比率になるよう心がけましょう。同じ種類の食品(生もの・肉・麺類・辛いもの)ばかりにならないように。また野菜海藻は加熱(煮る・炒める・ゆでる)して、かさを低くしてたくさん食べましょう。

⑦朝は王様、昼は庶民、夜は僧侶の食事

夕食がいちばんご馳走になるのが常ですが、理想は質量ともに朝>昼>夜です。夕食後、寝るまでの時間に余裕がない場合は特に心がけましょう。

⑧睡眠と食事の時間は規則正しく

体のリズム、消化液分泌のリズム、自律神経のリズムを乱さないことが消化と吸収をよくします。

⑨楽しくリラックスして食べる

気ぜわしく考えながらの食事では交感神経が緊張して唾液や胃液の分泌が減り、消化力が低下するうえに胃粘膜が荒れやすくなります。ゆったりした気持ちで、あるいは家族と一緒に食べることが消化力をアップさせてくれます。

⑩腹式呼吸と適度な運動

腹式呼吸で横隔膜を動かすと内臓を刺激し、血行がよくなります。また自律神経も安定するのでリラックスできます。運動も食欲増進とストレス発散に役立ちます。軽いウオーキングやストレッチ、足踏み動作だけでも有効です。

⑪感謝して食べる

加工品やお総菜を見ているとつい忘れがちになりますが、料理の素材は元々すべてが命あるものです。我々は動物や植物、菌類の命をもらって体内に取り込んで生き長らえています。もらった命に感謝することが食をおろそかにしない基本中の基本です。

笑いと健康

吉本新喜劇を見ると免疫力が高まるという話がありましたが、実際に笑いには様々な効用があります。

・自律神経が安定(リラックス)する

・血液循環がよくなる

・ストレスが減少する

・血圧、血糖が下がる

・感染症が予防できる(免疫グロブリン増加)

・がん予防ができる(ナチュラルキラー細胞増加)

・鎮痛、抗うつ効果がある(βエンドルフィン分泌)

・頭寒足熱になる

…等々です。

笑いには即効性があり、副作用もなく、費用もかかりません。普通、我々は笑いを得るため、なにか楽しいことをしようと考えます。会話をする・バラエティ番組を見る・体を動かす・歌を歌うなどで楽しくなると笑いが出る(ラフスマイル)という図式です。

ところが、もっと簡単で即効性のある方法があります。…それは何の準備もなく「笑顔をつくる(メイクスマイル)」ことです。むりやりにでも笑顔を作ると脳内でハッピーホルモンと呼ばれるβエンドルフィンが分泌され、脳が「楽しい」と勘違いします。すると今度は脳の楽しさが顔面に伝達されて、本当の自然な笑顔になるのです。作り笑顔が笑いを誘うという図式です。これを「顔面Wフィードバック効果」といい、笑顔が苦手な人や、笑う機会が少ない人にはオススメの方法です。

実際に笑顔を作る時には「表情筋(表情を作る顔面部の30種類以上の筋肉)ストレッチ」を行います。

口角(口の両端)を普段より10度上げて笑顔を作るのです。上の歯を見せて笑顔をつくるように心がけたり、割り箸を口に加え口角を上げる練習をしてもよいでしょう。とにかくスマイル、スマイルです!

笑顔や表情を作る訓練は、健康面では脳の活性化、認知症や脳梗塞の予防、自律神経安定などの他、眼精疲労の予防、胃腸の働きの調整、口呼吸の改善、唾液分泌の促進、噛み癖の改善、誤嚥の予防、顎関節症の軽減にも役立ちます。

美容面でもシワ・たるみ・むくみ・肌荒れ・顔や口元の歪みの改善に有効ですし、何より笑顔そのものが明るい・優しい・前向きな印象を与え、人間関係やコミュニケーションがうまくいくようになります。

これを鏡のように表情が伝わるという意味で「ミラー効果」(自分が笑顔→相手も笑顔、相手が笑顔→自分も笑顔)といいます。

もちろん、作り笑顔であっても冒頭に述べた「笑いの効用」も当然得られます。

作り笑顔で心身ともに健康を作りましょう(笑)。

*顔のスイッチを切り替えれば、心のスイッチも変わります。

*楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しいのです。

*笑顔は笑顔を育てます。

*笑う「顔」には福来たる。

(表情筋セラピスト公認インストラクター 上田真弓先生の講演より抜粋)

(補遺)

「笑顔の効用・笑顔を作ることの効用」について書きましたが、土台になっているのはスマイルセラピーという考え方です。

スマイル(笑顔)を通じて好感度をアップして人間関係をよくするとともに、心の持ち方をポジティブにさせるという療法で、文中で述べたように「顔面Wフィードバック効果」と「ミラー効果」を基本に、メイクスマイルにより心のスイッチをネガティブからポジティブに切り替えます。その結果、健康・美容・人間関係の改善につながるというものです。

一般的に、笑顔や笑いは感情の帰結だと考えがちですが、笑顔そのものに意味や効用があると判れば、行動も変わるのではないでしょうか。ただ、電車の中や人前で練習すると怪しい人だと思われるかもしれませんのでご注意下さい。

健康の成り立ち~血液

我々が生きていくうえで「血液」はどのような役割を担っているのでしょうか。

血液は骨髄で造血幹細胞から造られ、体重60kgの人で約5㍑、1日に全身を巡る血液量は7500㍑にもなります。

血液中の細胞成分…血球には、酸素を運ぶ赤血球・免疫に関わる白血球・止血をする血小板があります。

血液中の液体成分…血漿には、体の働きを調節する各種ホルモン・タンパク・糖質・脂質・ミネラルなどが含まれています。

血液の主な役割は…

①酸素・糖・栄養物質・ホルモン・熱を全身に運搬し、脳・内臓・筋肉・細胞の活動・代謝を維持

②白血球が病原菌や異物から体を防衛(免疫)

また、一人分の総延長が10万㎞(地球2周半!)に及ぶ血管は、生命維持に不可欠な成分を積んだ血液という車を、体の隅々まで運ぶための道路です。したがって、血管に問題(亀裂や閉鎖)があると血液が働けないばかりでなく、生命にかかわることになります。

③血小板が血管の損傷を防止

④血液の循環自体が血管閉塞・血栓生成を防止

すなわち、血液は血管網の中をしっかり流れることにより、全身の恒常性維持、異物からの防御、血管の修復を同時におこなって、生命維持に寄与しているのです。このように血液は生命維持に不可欠であることから「流れる臓器」ともよばれています。

《血液の状態がよくないと起こること》

・糖尿病、痛風などの代謝性疾患が起こりやすい

・血圧が高くなりやすい

・肝臓・腎臓の機能が低下しやすい

・脳卒中(脳梗塞・脳出血)や心臓病が起こりやすい

・全身の免疫力が低下しやすい

・倦怠・凝り・痛み・しびれが起こりやすい

・全身や内臓の老化が進みやすい

《血液と血管の質は何で決まるか》

*肝機能(代謝・解毒能力)がしっかりしていること …飲酒、過労、ストレス、化学薬品に注意

*腎機能(代謝・解毒能力)がしっかりしていること …過労、高血圧、高脂血症、糖尿病に注意

*血糖・コレステロール・中性脂肪値が正常範囲であること …高いと血液粘度が上がり高血圧・動脈硬化に

*食事…タンパク・ミネラル・食物繊維不足に注意すること

*生活リズム(自律神経バランス)に注意すること …夜間の活動や飲食・過度のストレスに注意

(水分補給は血液を薄めても質は改善されない …取り過ぎによる健康被害に注意)

《血虚チェック》

血液…漢方における血(けつ)には、全身に栄養を与え、潤し、精神を安定させる働きがあるので、血虚(けっきょ…血の不足)になると以下のような症状が起こりやすくなります。

① 手足が冷えやすい

① 疲れやすく、顔色が悪い

① 筋肉が凝ったり、つりやすい

① 爪が薄くて割れやすい

① 経血が減少し、月経周期が長くなる

② 目が疲れやすく、乾きやすい

② 肌が乾燥する、冬に粉をふく

② 髪にツヤなく、抜け毛が多い

③ 不安感が強く、落ち込みやすい

③ 眠りが浅く、夢を見ることが多い

(①は栄養面、②は潤い面、③は精神面の血虚症状です)

血虚症状が長く続くと筋肉量・骨量・ホルモンバランスにも影響してくるので、早めにご相談下さい。

健康寿命を伸ばす方法

日本人の平均寿命は(四捨五入すると)男80歳、女86歳ですが、自立した生活できる期間を示す健康寿命となると男70歳、女74歳で、介護が必要な期間が10~12年もあります。健康で自立した人生を送り“ピンピンコロリ”を目指すために、また平均寿命と健康寿命の差を縮めるために欠かせない3つの大切なポイントがあります。

①タンパク摂取を心がける

タンパク質は血液・血管・内臓・筋肉・骨・ホルモン・酵素など、体の様々な組織を作る材料。不足すると貧血・脳血管障害・内臓機能低下・低代謝・免疫不全・筋力低下~足腰の弱り・骨折・老化を起こしやすいのですが、近年タンパク・ミネラルが足りていない新型栄養失調が増えています。好きなものばかり食べる、粗食を心がけている、ダイエット中、高齢の方、パンにサラダ・麺類で食事を済ます方は要注意です。

⇒タンパク不足は血液中アルブミン値で判ります

⇒豆(特に大豆)+白米を一緒に食べるとタンパクの栄養価が高まります(アミノ酸バランスがよくなる)

②筋肉運動を心がける

筋肉や骨・関節が衰えると歩行などの運動能力が低下し、要介護や寝たきりになるリスクが高まります。 逆に筋肉が増えれば運動能力は高まり、寝たきり予防ができるとともに、基礎代謝がアップし脂肪を燃焼しやすくなるので肥満や糖尿病を防止できます。また体重が減れば足・腰・膝や心臓への負担を減らすことができるため、腰痛・膝関節炎・高血圧も予防できます。筋肉運動では特に大腰筋などのインナーマッスル(深層部筋肉)を鍛えることが大切です。

⇒スクワット・片脚立ち・階段升降運動がオススメ

⇒筋肉を増やすには「運動」+「タンパク摂取」が必須

③補腎を心がける

「腎」は腎臓の働きに加え、成長・発育・生殖能力・ホルモン分泌・骨格維持・脳活動など生命活動の原動力を提供する臓器。腎機能をサポート(補腎)することにより、足腰・内臓・脳・感覚器の老化を緩和し、健康寿命を伸ばすことができます。

⇒山芋・キャベツ・キクラゲ・ニラ・栗・クルミ・ゴマ・黒豆・イカ・エビ・海藻・羊肉・シナモン・サンショウ など腎を補う食品を積極的に摂りましょう

《唾液と補腎》

唾液は腎液…腎で生成される体内で必要な水液なので、唾液を飲み込むことは最も手軽な補腎法です。

食事はよく噛み、また酸味を加えてしっかり唾液を出し、咀嚼物とともに飲み込みましょう。食事時以外でも口の周りや舌を動かし、唾液を飲み込むようにしましょう。

古来、中国の養生家は唾液の事を醴液、華池、玉泉等と呼び、大切な命の水として尊んできました。唾液は腎を養う水として非常に大切なものなのです。

年をとり腎が衰えると唾液が次第に出なくなり、皮膚や五臓六府に潤いがなくなってきます。

現代医学的にみても、唾液には免疫を強化する様々な生理物質が分泌されています。たとえば、消化酵素のアミラーゼ、殺菌作用のあるリゾチーム、免疫作用のあるS-IgA(分泌型イムノグロブリンA)、老化防止の働きがあるパロチン等です。

高血圧

店頭での漢方相談では必ず普段の服用薬をお聞きするのですが、中高年以上の世代では高血圧の薬を服用されている方がたいへん多いとともに、薬を服んでいれば大丈夫だと考えている方が多いことに驚かされます。

しかし、血圧さえ下がれば高血圧は問題ないという考えには問題があります。本来、血圧は勝手に上がってしまうものではないからです。

血圧が上がるのは ①ストレス ②飲食内容の偏り ③加齢老化 ④内臓の弱り ⑤生活リズムの乱れ ⑥冷え ⑦運動不足 などの原因が長期にわたり組み合わさって続くことで…

「循環血液量が増加する」

「血糖や脂質などで血液が粘る」

「末梢血管が収縮しやすくなる」

「血管弾力が低下し動脈硬化が進む」

など、血管内を血液が流れにくい状況が出来ることによります。

元々血液は、酸素や栄養成分・ホルモン・免疫物質を体の隅々まで送り届けるとともに老廃物を持ち帰る重要な役割があります。特に脳にはどんなときでも一定の血液を送り続けなければなりません。だから、血液が流れにくい状況が出来ると、生命を維持するために血圧を上げてこれまでどおり栄養分を送ります。血圧上昇は体を守るための代償作用なのです。

現代医学において、血圧が上がる原因は様々であるにも関わらず一律に血圧降下剤を使用するのは、高血圧状態が続くと血管や心臓の負担が増大し、脳出血・脳梗塞・心筋梗塞・腎障害などの合併症を引き起こす可能性があるからです。もちろん血圧降下剤にも肝臓・腎臓に負担がかかったり動悸が起こったりとリスクはありますし、そのために定期的に血液検査をして副作用をチェックすることは欠かせません。

大切なことは、血圧降下剤を服用して血圧が下がっていても「高血圧が治ったわけではない」ことと「血圧を上げてまで運ぼうとした脳や全身への栄養分運搬量は不足したままになっている」ことを肝に銘じ、できるだけ①~⑦の原因を減らすような養生、努力を続けることです。それが長い目で見たときに心臓や脳・血管を守り、最終的に健康寿命を伸ばすことにつながるのです。

《降圧剤の服用と並行して心がけてほしいこと》

*交感神経亢進→血管収縮・血圧上昇を防ぐためにストレスを減らす努力をする

*血圧リズムを守るため朝型生活と夜間睡眠を守る

*良質な血液を維持するため肝臓と腎臓をいたわる

*新しい細胞・血管を作るためタンパク質を摂る

*血液粘度を下げるためミネラル・食物繊維を摂る

*血液粘度を上げる塩分・糖分・脂肪分は控えめに

*血流が悪くなるので四肢を冷やさない

*足を鍛えると血流がよくなり心臓の働きを補える

*不調時は横になり手足を温めると心臓負担が減る

高血圧の生活養生法は体質と生活状況で一人一人異なるものですので、詳しくは店頭でお尋ね下さい。

《ご相談時に》

高血圧や高血圧に付随して起こる症状について相談を希望される場合は、以下の10項目について申告して頂けますとスムーズに提案をさせていただきます。

①一番つらい症状(頭痛・めまい・耳鳴りなど)

②時期ときっかけ(1年前・職場が変わってなど)

③最初の症状の出方(突然・じわじわとなど)

④症状・血圧値の経過(180-95・悪化・不変・軽減傾向など)

⑤季節や一日の変化(夕方から悪化・冬に悪化など)

⑥悪化する状況(寒いと・生理前・忙しいとなど)

⑦よくなる状況(温めると・休日・よく寝るとなど)

⑧症状の前ぶれ(肩こり・吐き気など)

⑨同時に出る症状(のぼせ・めまいなど)

⑩治療経過(今までの治療内容・服用薬など)

老化と健康維持

東洋医学では成長・発育・生殖・老化は「腎」がコントロールし、その節目は男性が8の倍数、女性が7の倍数だと考えます。人間としての最盛期は男性32歳、女性28才で、以降は徐々に腎気…生命力が衰えていくのです。さらに現代医学では免疫力のピークは20代前半で、その後は加齢とともに低下していくことがわかっています。

《加齢で起こる変化》

①基礎代謝の低下

生命維持に最低限必要なエネルギー…基礎代謝は、20歳前後から減少し始め、50歳で10~20%、70歳では20~30%減少します。冷え症や筋肉量が少ない人はさらに低くなります。

②新陳代謝の低下

生命維持に不可欠な体の組織・細胞・骨・血液等の入れ替わり…新陳代謝のスピードは、加齢とともに緩やかになってきます。高齢になるほど病気やケガ、骨折の治癒に時間がかかるようになります。

③栄養吸収率の低下

消化器機能の低下により食事からの栄養吸収率は低下していきます。咀嚼力の低下や味覚障害が加わってくると食事量も減るので吸収される栄養量はさらに減少します。

④内臓機能の低下

胃腸の消化吸収だけでなく、肝臓の代謝解毒、心臓の血液循環、肺の呼吸とガス交換、腎臓の排泄などの内臓機能が緩やかに低下していきます。

⑤腸内環境の悪化

消化器機能の低下により大腸内の善玉菌は減少し、逆に悪玉菌は増える傾向にあります。下痢便秘やアレルギー・免疫異常・感染症へのリスクが高まります。

⑥免疫力の低下

我々の体を異物から守る仕組みである免疫力が低下していくので、感染症・ガン・自己免疫疾患などのリスクが高まります。ストレスと腸内環境悪化も大きく影響します。70代の免疫力はピーク時の10%前後にまで低下する(!)という報告もあります。

⑦運動機能の低下

30歳を過ぎると日常生活のみでは筋肉量は年1%ずつ衰えます。さらに骨密度も加齢とともに低下し、特に閉経後の女性は筋肉+骨量の減少が顕著です。

⑧血管の老化

血管内壁にある内皮細胞の機能が衰えていくことにより動脈硬化が進み、心臓への負担も大きくなります。運動不足・高血圧・糖尿病・脂質異常症などがあるとさらに早く進行します。

⑨ホルモンの低下

成長ホルモン・メラトニン・女性ホルモン・男性ホルモンなどが低下します。更年期症状・代謝低下・うつ・筋肉や骨量の減少などに大きく影響します。

加齢によるこれらの変化と反比例して仕事や家事が忙しくなったりストレスが増えていくと、心身の消耗が回復力を上回るようになり、疲労が蓄積していくことにより体の不調が増えていきます。

《抗老化(アンチエイジング)のために》

*体と内臓を冷やさないことが抗老化の基本です

*ストレス・過労・睡眠不足を続けないように
リラックスできる時間が大切です
午後10時~午前2時の間は眠っているのが理想です

*喫煙・度を超した飲酒は避けましょう

*軽運動や筋肉運動(ロコトレ)を毎日続けましょう

*体質と生活に合わせた食養生を実践しましょう

*毎食のタンパク摂取を心がけましょう
高齢者は血中アルブミン値のチェックを

*和食・温野菜・根菜・発酵食品を食卓に
(植物性乳酸菌+食物繊維製剤が役立ちます)

*薬食同源…自然薬の補給を心がけましょう
代謝改善・内臓機能保護・抗酸化・免疫力アップに
レオピン・瓊玉膏・牛黄・田七製剤などが役立ちます

健康を維持することは目的ではなく、いきいきとした人生を送るための土台であり手段です。

エイジングには「老化」とともに「熟成」という意味があります。体質に合った健康習慣を実践して、人として熟成し充実する時期に、病気や体の衰えによって生活の質を落とさないように気を付けましょう。

《フレイルとは》

フレイルという言葉をご存じでしょうか。これは「加齢に伴って筋力や心身の活力が低下した状態」のことで ①体重が減少した ②疲れやすくなった ③筋力が低下した ④歩くのが遅くなった ⑤活動が減った のうち3つ以上該当すればその疑いがあります。フレイルが進むと筋力だけでなく体力や気力・認知機能まで低下して、要介護状態にまで進行していく可能性があるので注意が必要です。
予防には食事と運動の組み合わせが不可欠ですが、ご高齢の方の食事は筋肉や骨を丈夫にするタンパク質が圧倒的に不足しており、タンパク不足での運動はかえって筋肉や関節を痛めてしまいます。「パンや麺類だけで食事する」「粗食・和食を心がけている」「果物や野菜はよく摂る」という食事に落とし穴があります。60歳を過ぎたらアルブミン値(血中タンパク濃度)4.5を目標に食事を摂りましょう。

健康の三本柱

通販や健康情報番組の影響でサプリメントを服用する人が増えていますが、長続きしなかったり、なんとなく飲んでいるという人がとても多く、店頭でも「いろいろありすぎてどれを飲んでいいのか分からない」 「何が一番いいですか」 という質問を受けることがあります。そんなとき店頭では「人によって様々ですので、以下の3方面からご自分の生活を見直してみて下さい」とお話ししています。

《入れていますか(食生活)》

人間の体は生きているかぎり新陳代謝をしています。胃粘膜は3日で、血液は4ヶ月で、筋肉は6ヶ月で、内臓や脳の細胞は1年で、骨は2年ですべて入れ替わっており、新陳代謝するからこそ病気やケガが治り、体質も変わるのだともいえます。

体の入れ替わりの材料(タンパク・糖質・脂質・ミネラル等)はすべて食べ物から供給されますので、食事に問題があれば、細胞も血液も血管もホルモンも刷新することができず、健康に大きな影響が出てきます。

1日何回、何時頃に食べるのか? どのようなものを食べているか? どのような食べ方をしているか? …これらをチェックすることにより、新陳代謝と健康維持に必要な栄養の過不足が判ります。

大まかな問題点は口頭チェックでも判りますが、一週間分の食事記録表に記入していただくと、過不足だけでなく生活の問題点も浮かび上がってきます。

《巡っていますか (内臓・血液・自律神経)》

体内には内臓があり、内臓から全身に血管やリンパが張り巡らされています。内臓は車でいえばエンジンで、人間には働きの違う五つのエンジン(五臓)が生命を維持するために働いています。そして内臓の働きを全身に及ぼしたり、栄養や酸素やホルモンを隅々まで運搬するために、運搬車(血液)が道路(血管)を常に巡っています。これら内臓の働きや血液の循環は管理システム(自律神経)によってコントロールされています。

すなわち内臓・血液・自律神経が調和し、活動し、循環していることが健康の基本なのです。そのため、体質の偏りや生活リズムに問題があると体に不調や症状が現れるようになります。

日頃の症状や生活状況をお聞きすることにより、適切な漢方薬やサプリメントを選ぶことができます。また漢方問診票に記入していただくことで、さらに詳細な養生法をアドバイスすることができます。

《出していますか (排泄)》

腸は体の末梢神経や毛細血管の半分以上が集まる場所であり、ヒト最大の免疫器官・ホルモン産生器官でもあります。免疫やホルモンに関わる重要な臓器であるため、腸内環境の良し悪しと便通が健康に大きく影響します。

大便はほとんどが食べ物のカスだと思われているようですが、実際は固形成分の2割もあればいいほうで、残り8割は古くなって腸壁からはがれ落ちた細胞・体内の老廃物質・腸内細菌などです。したがって何も食べなくても排便は毎日あるべきで、それができていないと老廃物質や解毒した異物は体外に排出できず、内臓や血液中に毒素が溜まっていくことになります。

便通の状況とともに、食事の内容や水分の摂り方などを確認することにより、必要な場合には腸内環境や便通を整える漢方薬やサプリメントを選べます。先に紹介した一週間分の食事記録表はここでも問題点の把握に役立ちます。

このように、まずライフスタイル(生活や食事)と体質からどこに問題があるのかを見極めることが大切です。問題が明らかになれば、体質の偏りや弱りを是正する漢方薬や栄養の不足を補うサプリメントは何か、またどのような生活養生が必要かが明確になるのです。漢方問診票や食事記録表は店頭に置いてありますので、いつでもお申し付け下さい。

腸活

「腸活」という言葉をご存じでしょうか。就活・婚活などと同じ略語で、腸内環境を整えることによって身体全体のコンディションを上げる健康法のことです。

特に冬の腸活はカゼや冷えの予防にもなります。

我々の体には、カゼやインフルエンザなどの病原体を侵入させないためのバリア機能と、侵入した際に撃退する免疫システムが備わっています。そして司令塔としてその最前線を司り、免疫の約70%を担っているのが腸管(…小腸上皮のパイエル板)です。実は腸は体内最大の免疫器官なのです。したがって、寒い時期に睡眠不足・過労・ストレス・食生活の偏りがあると腸内環境が悪化し、免疫力が低下しカゼを引きやすくなります。

また腸内環境が悪化すると、腸の動きが停滞し血流が悪くなって副交感神経の働きが低下します。自律神経が乱れると冷え症が悪化しやすくなり、腸の修復機能も低下します。さらに腸は「脳の働きを高める」「感情をコントロールする」「快眠をもたらす」働きもあるとされています。

このように腸内環境と免疫システムと自律神経は互いに密接に影響し合うため、冬を元気に過ごすためには感染症予防・生活改善と併せて腸活がとても大事なのです。

以下の内容に注意しましょう。

・3食きちんと食べましょう

・食事の際、よく噛んで唾液を混ぜましょう

・食事中の過度な水分摂取は控えましょう

・野菜(できるだけ加熱)や発酵食品を積極的に摂りましょう

・乳酸菌と食物繊維を積極的に摂りましょう

・便秘やスッキリしない排便は改善しましょう

・夜更かしと睡眠不足は絶対に避けましょう

・肉・油もの・スイーツは摂り過ぎないようにしましょう

・冷たいものや生ものは摂り過ぎないようにしましょう

腎臓が寿命を決める

人体は脳が司令塔で、他の臓器は脳に従うというのがこれまでの常識でした。しかし最近では体内の臓器同士が直接情報を交換して支え合っていることがわかってきました。人体は、指令物質を通して臓器間で連関することにより生命を維持する巨大ネットワークであるという考え方に変わってきているのです。

臓器間で行き交う指令物質は現在わかっているだけでも数百種類あり、それを全身に送り届けているのが血管です。血管は各臓器を繋ぐ通路なので、血管に障害があると臓器の健康も保てなくなります。

すなわち生命維持に必須なのは臓器間のスムーズな連関と血液血管の健康です。そしてその意味から臓器の中でも特に大きな役割を担っているのが腎臓です。

腎臓には主に以下のような働きがあります。

「尿を造る」

血液を濾過(必要なものは再吸収)して尿を作り、老廃物や塩分を排泄する。排尿と再吸収により体液のバランス調節と血液の健康管理を行なう。

「血圧を調節する」

塩分と水分の排出量調節と、腎臓からの昇圧物質分泌により血圧コントロールを行う。

「血液を造る」

腎臓からのエリスロポエチン分泌により骨髄で赤血球を増産する。

「強い骨を造る」

腎臓で活性型ビタミンDをつくり、カルシウム吸収を促進して丈夫な骨を作る。

腎臓が血圧や造血、骨形成の司令塔であることはあまり知られていないのではないでしょうか。

なお、これらの働きはすべて腎臓自身の判断ではなく他臓器からの働きかけによって起こります。

腎臓と連関して働いている臓器は心臓・肝臓・肺・胃・腸・脳・骨・甲状腺などであり、心臓が送り出す血液の4分の1は常に腎臓に送られています。臓器間の連関、血液血管の維持という両面から腎臓はまさに体内ネットワークをコントロールする中心的存在です。

全身の臓器と深く結ばれていている腎臓は、その複雑で精緻な仕組みゆえに人体で最も傷つきやすい宿命も背負っています。腎臓がダウンすると多臓器不全の引き金になり、逆に他臓器に病気があれば腎臓に悪影響が出てしまうのです。欧州では入院患者の5人に1人が急性腎障害になっていて、腎臓を守っていれば年間20万人の命が救えていたというデータもあります。世界の医療現場では腎臓以外の病気の患者であっても、腎臓の状態を常に監視することの大切さが重要視されるようになってきました。

《腎臓が寿命を決める》

最新の研究では、腎臓が調節する血液成分のひとつリンの濃度が寿命と関係することがわかっています。

リンは肉や豆に含まれる重要な栄養素で、不足すると呼吸不全・心不全・骨軟化症などを、逆に多すぎると老化(動脈硬化や骨粗鬆症)を促進します。血中のリン濃度が低いほど寿命は延びるのですが、腎臓の働きが落ちると血液中のリンを処理排泄できないため老化が進んでしまいます。腎臓が健康であれば、老化を遅らせ寿命を延ばせる可能性があるのです。

《東洋医学との類似点》

以上のような臓器連関と腎臓の重要性は、実は漢方の考え方とかなり近いものがあります。

漢方では脳よりもむしろ五臓(肝・心・脾・肺・腎)が人体をコントロールする主体であると考えますし、五臓の間のやりとりである相生(助け促進する)、相克(抑制しあう)関係はまさに臓器連関そのものです。

腎に存在する腎精が生命力の根源となり、成長発育と老化を制御する(腎臓が寿命を決める)

腎は水をつかさどる(腎臓が水分代謝を支配する)

腎は骨をつかさどる(腎臓が骨や髄、脳を作る)

このように漢方でも腎は免疫力や生命力の源だと考え、体質改善には補腎益清(腎精を補い生命力を高める)や抗老防衰(老化防止)ができる補腎薬を基本に考えます。疲労や睡眠不足が溜まっている方、慢性病や持病をお持ちの方は生命力の土台である腎臓をいたわり、血液血管の老化を未然に防ぐことが大切です。

運動療法の問題点

近年、転倒骨折や寝たきりに繋がるロコモ症候群(膝関節炎・座骨神経痛・脊柱管狭窄症・骨粗鬆症など)が話題になり、その予防法として様々な体操やリハビリ方法が認知されるようになりました。しかしながら、店頭で多くの方と接していると、運動だけでは症状が改善しない人や、むしろ悪化してしまう人がたいへん多いことに気がつきます。

運動療法の目的は骨・関節とそれを動かす筋肉を強化することですが、骨・関節・筋肉を構成する成分であるタンパク質(アミノ酸)やミネラル(カルシウム他)は毎日体内で消費され減っていくので、いくら運動をしても、それを作る材料(栄養)が新たに補給されていなければ筋肉は強くならず、むしろ消耗して痛めるだけです。

ところが店頭で食事内容についてお聞きすると、年齢を問わず『朝はパンとコーヒー、昼は麺類、夜はご飯とおかず』というようなパターンがとても多いのです。この食事内容を一言で表すと『タンパク質・ミネラル不足と炭水化物過剰』です。このような食生活では大人で1日60gと言われるタンパク質の必要量(…ちなみにサーロインステーキだと600g、卵だと10個、豆腐だと3丁、牛乳だと1.8Lが必要)にはとても届きません。

基本的な栄養成分が足らない状態で、運動やストレッチ、ウオーキングを行い、骨・関節・筋肉に負荷をかけ続けたらどうなるでしょう。これが腰や膝の痛みがなかなか改善しない最大の理由です。

最近は治療のために骨粗鬆症の薬やホルモン剤など、様々なお薬が病院から出ますが、栄養補給をおろそかにしては症状改善は難しいことを肝に銘じておましょう。

本来、私たちの体の細胞(皮膚・内臓・神経・筋肉・骨・血液など)はすべてが常に入れ替わっています。

例えば、胃粘膜は3日で100%が、筋肉は1ヶ月で60%が入れ替わりますし、血液は4~6ヶ月で、脳細胞や肝臓・腎臓の細胞は1年で、骨は2~3年で新しくなります。つまり、体はたとえ何歳であっても生きている限り絶え間なく新しくなっています。外見はそう変わらなくても、3年後の自分は細胞という面から見れば全くの別人なのです。このような入れ替わりを体内再生…最近では動的平衡とも呼ばれます。

この体内再生のための細胞の原材料が食事の栄養なのですから、飲食の偏りや不足がいかにコワイかがお判りいただけると思います。

*骨・関節・筋肉の強化にはゆっくりと筋肉を動かすスクワットや片脚立ち運動などが基本となります。

ウオーキングや単純な体操などではインナーマッスル(…姿勢の維持や下半身を使う動作を制御する筋肉)を鍛えることができません。

*骨・関節・筋肉の強化に必要な栄養素はタンパク質(アミノ酸)・ミネラル(カルシウム他)です。

*栄養補給は1日3回、毎食の補給が必要です。また運動やリハビリ後の補給が特に有効です。

*運動と栄養補給と血流改善がセットにならないと骨・関節・筋肉の強化はできません。

さらに東洋医学では、骨・関節・筋肉の老化防止には「肝」と「腎」の強化が不可欠だと考えます。

「肝」には全身に栄養を送るための血液の質や血流をよくするとともに、筋肉の形成と維持を助ける働きがあり、「腎」には体力や運動能力のエネルギー元となるとともに、骨や関節の形成と維持を助ける働きがあるからです。

体内再生を促進するためには漢方の気血双補剤や補腎剤が役立ちます。

(補遺)

ノーベル賞医学生理学賞を受賞した大隅先生の研究「オートファジー」とは「タンパク質のリサイクル機構」のこと。

タンパク質は体の細胞・内臓・皮膚・筋肉・骨・血液・ホルモン・酵素・免疫物質を構成する成分で、ヒトは1日約300gのタンパク合成をしているのに実際の食事での摂取量は多くても60~80g。この不足分を補うのが体内タンパク質の分解再利用システムです。

大隅先生の発見はもちろんスゴイですが、驚くべきはオートファジーが細菌から植物・昆虫・魚・人間に至るまでほとんどすべての生物に共通するシステムだということです。生命は精緻で奥深いものですね。

教訓も…今の日本人の食生活は若者も高齢者もタンパク質不足。必要摂取量の半分にも満たない貧しい食生活でも生きていけるのはオートファジーのおかげですがもちろん限界があります。これを機会にタンパク摂取を軽視しては長生きも健康もないということを再認識してほしいものです。

健康法の2つの基準

世の中には体にいいとされる健康法や情報が次々と生み出されています。何が本当に正しいのかの判断に困る昨今ですが、健康法には2つの基準があると私は考えます。

1つめは「体質・生活・食事に合った健康法」です。

体質の偏りや不調の原因は個人個人違うので、体質・生活・食事をよく聞き取って初めてアドバイスができます。不調を改善するときの食養生や運動法、漢方処方の選択などがこれに当たります。この場合は例えテレビ・ネット情報で心惹かれてもサプリ・漢方薬・運動法の側から選ぶべきではなく、体質・生活・食事を考慮し不調の原因を探ったうえで選択しないと、効果が出ないばかりか悪化することもあります。

2つめは「体のしくみ・働きから考えた健康法」で、こちらは個人差に左右されず、人体生理に基づきアドバイスができるものです。健康を維持するときの食養生や運動法、漢方製剤などがこれに当たります。

それぞれの相談例を挙げてみましょう。

長年の筋肉痛と腰痛を治したい

芍薬甘草湯を服んでいるが少し楽になる程度

芍薬甘草湯は筋肉痛に効果がありますが、長期服用は控えるべき薬なので、この場合は不向きでした。

この方の場合は冷えやすい体質、デスクワークの姿勢、栄養成分の偏りに問題があったので、食事や生活の養生法を伝えるとともに、血流を改善し体を温める漢方補益剤+筋肉や骨の弱りを補う処方の長期服用をお薦めし、徐々に腰痛が軽減してきています。

デトックスしたいが自己流では効果がなかった

この方の場合、デトックス(解毒)には「水分やサプリをしっかり取って、運動したり岩盤浴や半身浴することで汗から毒素を排出して代謝をよくする」と

いうイメージがあったようですが、実は汗から有害物質が体外に排泄されることはなく、また水分摂取や発汗と新陳代謝の良し悪しは無関係です。

体内の解毒を担っているのは汗ではなく、肝臓と腎臓です。まさに肝腎要(かんじんかなめ)の二臓が協働して有害物質を分解して体から追い出してくれているのです。肝臓は体内に必要なものを造り出す化学工場であり、腎臓は体液バランスや血圧を調節し、骨や血液を造る司令塔でもあります。肝臓・腎臓を守ることは解毒力を高めるために不可欠であるとともに、健康度を高めるためにも大変重要なのです。

相談者には大きな体質の偏りがなかったため、内臓を冷やさないよう食事に気をつけること、シャワーではなく毎日湯船に浸かって入浴することともに、肝臓・腎臓を中心に内臓の働きを助ける漢方製剤を服用していただき、むくみ・肌荒れ・生理痛が改善し今に至っています。彼女曰く「岩盤浴しなくなったけど今のほうが温まるし体調がいい」とのことです。

情報の時代ですが、ウソやエビデンス(医学的根拠)のない話にはだまされないように気をつけましょう。

慢性病治療のポイント

慢性病の治療では「病気の原因や誘因を理解すること」ことと「薬だけで治そうとしない」ことが大切です。
いちど治ってもまた再発する症状や、長年治らない病気のご相談では、以下の点をきちんとご理解いただくことが重要だと考えます。

「いま病気でも大丈夫」

我々の体は60~100兆の細胞で成り立っていますが、日々入れ替わっています。

・脳 …脳細胞を構成するアミノ酸は1ヶ月で40%が、1年で残り60%が入れ替わる

・肝臓 …2500~3000億の細胞が1ヶ月で90%、残り10%が300日で入れ替わる

・胃腸粘膜 …粘膜は1~3日で、食道や口唇粘膜は4~15日で入れ替わる

・筋肉 …体重の40%ある筋肉は1ヶ月で60%が、残り40%が200日で入れ替わる(胃腸の蠕動運動を生み出す筋肉も同じ)

・骨 …骨質は水分25%・タンパク30%・無機質45%で構成。無機質の大部分はリン酸カルシウムで50日で30%が、残りは約2年で入れ替わる

・血液 …男性5リットル、女性4.5リットル(体重の約1/12)の血液は100~120日で入れ替わる

入れ替わるということは、病気は一生ものではない…言い換えれば「何歳になろうが人には自然治癒力や回復力がある」ということです。

入れ替わりの素材となる栄養、栄養を新陳代謝する内臓、新陳代謝を支える血液と血管の3つがしっかりしていることが自分自身の治す力(自然治癒力)を高めます。

「効くと治るは違う」

「効く」とは症状が楽になること、「治る」とは病気の原因がなくなって再発しなくなることです。

「効く薬」とは比較的短期間で効きめがわかるもので、病院の薬や症状改善のための漢方薬がこれに当たります。

「治る薬」とは時間をかけて自然治癒力(栄養・内臓・血液血管)を高めるもので、体質改善のための滋養強壮剤・漢方補益剤・栄養成分がこれに当たります。「治る薬」は短期間では効きめが判りにくいですが、半年~1年後には必ず自然治癒力・回復力の向上を感じることができるものです。

最も大事なことは同じ病気を繰り返さないことであり、その意味で慢性病の治療と再発防止には「効く薬」と「治る薬」の組み合わせと「正しい予防養生法」こそが大切です。

(相談時にはすでに病院の薬を服用されていることが多いので、店頭では基本的に新薬と併用できる補益剤・漢方薬・栄養食品をお薦めします)

「正しい予防と養生法を知る」

我々の今の体は、日々の生活習慣によって作られています。間違った「食」「運動」「心」の習慣を見直し、体の環境を変えることができれば入れ替わりが促進され、病気の治り方が格段に違ってきます。

数年後には全くの別人となり、若返ることも不可能ではありません。

「体力線を上げる」

①治る薬(+効く薬)の服用

②正しい栄養補給

③食・運動・心の習慣の改善

ができれば、健康の土台となる内臓・血液・血管を丈夫にして「体力線」すなわち自然治癒力を高めることができます。

体力線が低下すると様々な症状や病気が発生してしまいます。

体力線を高めれば「健康」に、さらに高めることにより健康貯金ができれば「元気」になるのです。

元気ラインまで体力線が上がれば、少々の疲労やストレスがあっても不調や病気が顔を出すことはなくなります。

体質改善、体質強化とはまさに体力線を上げることに他なりません。

店頭でよくある質問

~店頭でよくある質問にお答えします~

◆病院の薬と一緒に服用して大丈夫ですか?

当店ではくすりを選ぶときに「その人の自然治癒力と予防養生を無視して治療薬だけを出さないこと」「病院の薬と併用できること」を心がけ、その上で「①体質改善のための漢方製剤」「②症状改善(治療)のための漢方製剤」「③生活改善のためのサプリメント」という順番で、必要なものから提案させていただいております。

特に「体質改善用漢方製剤」に関しては、天然成分で体の弱りを補うため安全性が高く、病院の薬(化学薬品)と併用は全く問題ありません。

最近、病院で「治療用」漢方薬が出ることが増えましたが、こちらも併用に問題はありません。それでも服み合わせが気になる方や、後から処方せん薬の種類が増えたという方は随時お尋ね下さい。説明とともに、より適切な服用法・養生法をお知らせします。

◆病院の薬が増えてきましたが、それでも大丈夫?

病院の薬の種類が増えると、さらに漢方薬を服むのはちょっと…と思いますよね。でも、病院の薬と当店の薬(自然薬・漢方薬)は別ものとお考え下さい。

病院の薬は化学薬品なので種類や量が増えると内臓(特に胃腸・肝臓・腎臓)にかかる負担も増え、副作用が出る可能性が高まります。最初から胃腸薬が一緒に出たり、定期的に血液検査をするのには副作用対策の意味もあります。

ところが「体質改善用漢方製剤」には、胃腸・肝臓・腎臓の働きを助けて化学薬品の解毒排泄力を向上させる働きがあるので、実際には病院の薬の副作用防止になるのです。

病院の薬が増えるようならむしろしっかり服用して、化学薬品を長期服用しても副作用の出ない体づくりをした方が安心だし、生活の質も高まります。

◆治ってきたので服用を止めていいですか?

病気や不調には「体質」「生活状況」「食生活」「ストレス」「過労」などの原因が必ずあります。

先分類で言えば、「体質改善用漢方製剤」は原因を軽減するために、「治療用漢方製剤」はその結果現れる症状を治すために、「サプリメント」は主に食生活を改善するために服用いただいておりますので、生活養生・食養生を継続するという前提で、まず「サプリメント」、次に「治療用漢方薬」を服用回数を徐々に減らしながら中止していって下さい。その後、生活習慣と食生活を見直し、病気の原因そのものを減らすことができる場合は「体質改善用漢方製剤」も中止してみてよいでしょう。

逆に過労やストレスがなくならない場合は、また病気の原因を貯め込むことになるので、少しずつでも「体質改善用漢方製剤」を継続服用したほうが体は確実に守れます。

◇病院でもらっている薬の相談ができますか?

化学薬品、漢方薬、サプリメント、処方せん薬、市販薬、通販商品なんでもご相談下さい。病院の薬が多種類になる場合だけでなく、一人の方が様々なものを服用している場合も「交通整理」は必要です。

自分にとって必要なもの(優先順位)はどれか、不要なものや意味のないものはないか、相互作用は起こらないかを理解することはとても大切です。かかりつけのよろず健康相談処、薬やサプリメントの交通整理屋だと思って、お気軽にご相談下さい。

◇どのサプリメントを選べばいいのでしょう?

サプリメントの長所は、手軽に飲みやすいものが多いこと、1~2成分で出来ているので目的が明確であること、比較的安価であることです。

逆に短所は、自己判断で選ぶので合わない効かないことが多いこと、種類や錠数が増えると体内に入る添加物の量が増えること(肝臓に負担)でしょうか。

漢方薬やサプリメントは広告や口コミで選ぶのではなく、自分の体質と生活・食事の状況から優先順位をつけて選ぶべきです。できれば服んでいるサプリメントの袋やビンをそのままご持参下さい。添加物なども考慮して仕分けさせていただきます。

サプリメント選択の基準

健康維持のためのサプリメントとして水素水・酵素・ゴマ成分・乳酸菌・葉酸・コラーゲン・マルチビタミン・青汁など様々なものが流行りましたが、それらの製品を選んだ理由を伺ってみたところ 「宣伝を見て」 「なんとなく」 「何が良いかわからないので有名なものを選んだ」という方がほとんどでした。

サプリメントは手軽に飲めること、成分がシンプルで目的が明確であることが長所で、逆に効果がわかりにくいこと、種類や錠数が増えると添加物の量も増えて肝臓の負担になる可能性があるところが短所といえます。

我々薬剤師はサプリメント(自然藥や滋養強壮剤を含む)を以下の基準で選びます。

①相談者の体質・生活習慣・食事内容を考慮する

②相談者の不調や症状の改善に何が必要か考える

③病院の薬との併用可否をチェックする

④できれば一製品で多機能なものを選ぶ

人は皆、体質も生活リズムも食事内容も異なるので健康を守るのに必要な成分も個人個人で違います。

例えば抗酸化サプリメント(ゴマ成分・ポリフェノール等)はハードに運動する方や喫煙する方には推奨しますが、誰もが抗酸化成分を摂取して活性酸素を除去してしまうのは問題があります。体内に存在する活性酸素は細菌・ウイルス・ガン細胞・毒物等の異物除去という重要な役目があり、体内では一定量の存在が不可欠だからです。

さらに、有用なサプリメント製品の機能については以下の点を重視すべきだと考えます。

・内臓機能の補助ができるか

・血液の質の改善ができるか

・血管老化(動脈硬化)を防げるか

・腸内環境を整えられるか

・骨・筋肉量の維持ができるか

・自律神経の安定ができるか

・ストレスから体を守れるか

・免疫力の向上に役立つか

基準①~④に則り、必要な機能を併せ持つ製品をご紹介致しますので、詳しくは店頭でご相談下さい。