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《五臓とは》
東洋哲学には、自然界の全ての事象を5つの要素(木・火・土・金・水)に分ける「五行論」という考え方があります。
そして、五行の木・火・土・金・水に対応して人体の働きを5つに分けたものが五臓五腑…すなわち「肝」「心」「脾」「肺」「腎」です。
人間の体は五臓を中心に機能しており、五臓が正常に働くことにより健康に生きていくことができます。
漢方では五行論を人体の生理・病理に当てはめて応用していますが、五臓は西洋医学でいう肝臓・心臓などの臓器とは異なり、より広い概念や機能を指しています。
肝:肝臓の働きも含んでいますが、他の臓器の働き・気血の働きや流れ・感情や自律神経の働きを「調節」する働きがあります。ストレスの影響を受けやすい臓器です。筋肉や目の働きにも関与します。
心:心臓と同じ働きをもつほか、精神活動全般(意識・思考・睡眠)を支え、統括する司令塔の働きがあります。脳や血管の働きにも関与します。
脾:飲食物の消化・吸収・代謝を通じて、生命維持に必要な気血(エネルギー)を補充する働きがあります。
西洋医学では胃腸や膵臓~一部肝臓の働きに相当します。
肺:呼吸や水分代謝を調節する働きがあります。また皮膚表面の免疫(体を防御する)機能を整える働きもあります。
腎:腎臓と同様、水分代謝の働きを担います。また成長・発育・生殖・老化に関与し、骨の維持や内分泌系の働きも含みます。
《五臓の働きを支える気・血・水》
漢方では、人体が生命活動を行うために必要な基本物質を気・血(けつ)・水(すい…津液しんえきともいう)といいます。
気・血・水は五臓の働きを支えるものであるとともに、五臓によって生み出されるものです。
五臓はそれぞれが独立して働いているのではなく、相互に関連(促進や制御)し合っており、他の臓器の助けがなければどの臓器も機能しない仕組みになっています。
五臓の働きが正常であることは、人体を病から守り健康を維持するためにきわめて重要なことですが、その土台となるのが気・血・水なのです。
気:人体の活動を推進するエネルギー。体を温めたり、防御したり、代謝を促進する働きもあります。気が体全体をくまなくなめらかに巡っていれば体や臓腑も元気に働きます。
血:全身の血脈を流れ、人体を養う栄養物質。精神活動を支える物質的な基礎にもなります。
水:人体を潤し養う水液。唾液・胃液・涙・汗なども含みます。
未病とは
未病(みびょう)という言葉は、今から二千年前の中国の医学書「黄帝内経」に初めて書かれています。
未病とは「未だ病まざる」状態…すなわち病気と診断されてはいないが、様々な不調や症状が見られる状態のことです。ちょうど「健康」と「病気」の間だといえるでしょう。
不調をもたらす最も大きな原因が「五臓の弱り」と「気血水の乱れ」です。
検査機器が発達した現代において、未病とは「自覚症状はあるが検査では異常がない状態」ですが、同時に「自覚症状はないが検査では異常がある状態」も未病だと捉えることができます。
未病先防とは
未病の状態を的確に把握し、先手を打てば病気を予防することができます。
漢方では「未病先防(みびょうせんぼう)」といって、体のあちこちで起こる不調や悩みが病気に確定してしまわないよう未然に防ぐことを重視します。まさに「転ばぬ先の杖」といえます。
さらに元氣創造へ
我々の体は、生命を維持するための精緻で複雑なシステムを作り上げています。
それだけに五臓や気血水の弱りは全体のバランスを崩し、ひいては全身の働きや回復力を低下させる要因になります。
また人間には避けられない宿命…6つの弱りがあります。
1.内臓の弱り
2.骨の弱り
3.血管の弱り
4.神経の弱り
5.ホルモンの働きの弱り
6.免疫力の弱り
自分の体は自分で守る。内臓・骨・血管・神経・ホルモン・免疫を積極的に強化し、自分の健康レベルをさらに高めて、未病先防(病気から守る)から、元氣創造(健康をデザインする)を目指しましょう。
五臓が様々な原因で弱ると、五臓に関連する機能が低下して、不調が体に表れるようになります(未病の状態)。弱りがさらに進むと、症状だけでなくはっきり病気が増えてくるようになります。
五臓と関連する症状、病気の関連性を、五行論にもとづきわかりやすくまとめたのが次の図です。
【肝に関連する器官】
胆のう 目 筋肉 爪 自律神経
【肝の弱りで見られる症状】
イライラ 抑うつ 情緒不安定 口が苦い 疲れ目 めまい しびれ 肩こり 筋肉のひきつりやけいれん 胸脇腹の張りや痛み 髪や爪の弱り
【肝の弱りから起こりうる病】
肝臓病 肝炎 胆のう炎 皮膚病 神経症 自律神経失調 生理痛 生理不順 更年期障害 高血圧 耳鳴り 不眠 眼病 眼精疲労 ぢ 胃潰瘍 黄疸
【心に関連する器官】
小腸 舌 血管 脳
【心の弱りで見られる症状】
動悸 息切れ 立ちくらみ 脈の異常 血流障害 不安感 不眠 夢が多い 物忘れ 排尿異常
【心の弱りから起こりうる病】
心臓病 不整脈 狭心症 心筋梗塞 動脈硬化 高血圧 低血圧 脳卒中 脳梗塞 神経症 認知症
【脾に関連する器官】
胃 肌肉 口 唇
【脾の弱りで見られる症状】
食欲不振 悪心 嘔吐 胃痛 口臭 便秘 下痢 むくみ 倦怠感 立ちくらみ 出血
【脾の弱りから起こりうる病】
胃腸障害 胃炎 胃潰瘍 逆流性食道炎 膵炎 内臓下垂 ぢ 脱肛 皮膚病 アトピー性皮膚炎 アレルギー 貧血 糖尿病 肥満 リウマチ
【肺に関連する器官】
大腸 鼻 皮膚
【肺の弱りで見られる症状】
咳 痰 呼吸困難 声がれ 鼻水 鼻づまり じんましん 肌乾燥 風邪を引きやすい
【肺の弱りから起こりうる病】
感冒 ぜんそく 気管支炎 咳ぜんそく 肺炎 鼻炎 副鼻腔炎 咽頭炎 扁桃腺炎
【腎に関連する器官】
膀胱 耳 骨 脳 髪
【腎の弱りで見られる症状】
排尿異常 足腰の弱り 精力減退 骨の弱り めまい 耳鳴り 老化 物忘れ 冷え のぼせ むくみ 脱毛白髪
【腎の弱りから起こりうる病】
腎炎 腎盂炎 膀胱炎 前立腺肥大 腰痛 不妊症 更年期障害 骨粗鬆症 認知症 高血圧 糖尿病
※関連性は絶対的なものではありません。また西洋医学での診断結果と異なることがあります。
五臓を守り、気血水を生成するのに最も大切なのが食べ物です。食べ物には様々な性質があるのでバランスよく食べることが基本です。
ただ、人によって体質の差があったり、弱いところは違うので、未病先防や元氣創造のためにはその人にあった食養生が必要です。また、体質の偏りや弱りが大きい場合は一般的な食材だけでは役不足なため、いわゆる生薬と呼ばれる薬草が必要になります。
食材も生薬も「食して命を養う」という意味では同じものなので「薬食同源」と言われます。
ここでは積極的に五臓と気血水を補い、助けることができる代表的な生薬を紹介いたします。
人参
人参(ニンジン)は朝鮮人参・高麗人参・御種人参などの別名があるウコギ科の多年草の主根です。
味は甘・微苦、性質は微温、脾・肺に働くとされています。
「人参七効説」では、
①補気救脱:疲労回復・体力増進・老化防止
②益血復脈:貧血・低血圧・心臓虚弱を改善
③養心安神:ストレス・不眠・自律神経失調を改善
④生津止渇:肌の乾燥・体液不足・口渇を改善
⑤補肺定喘:肺虚弱や喘息を改善
⑥健脾止瀉:胃腸病・下痢・便秘・食欲不振を改善
⑦托毒合瘡:皮膚病・肌あれを改善
などの働きがあるとされています。
大蒜
大蒜(タイサン)はネギ科の多年草ニンニクの球根です。
味は辛、性質は温、脾・胃・肺に働くとされています。
その薬効は古くから知られ、いろいろな病気の治療に応用されてきました。
たいへん豊富に栄養成分を含んでいますが、薬効の本体は含硫アミノ酸やミネラルなどの微量な生理活性成分にあります。
一般には強壮効果が有名ですが、本当に重要なのは「体を温めて免疫力を高める作用」です。冷えや低体温による免疫低下は、各種感染症や炎症・ガン発生に影響を及ぼしますが、そのリスクを低減してくれるのです。
アメリカ国立がん研究所で発表されたデザイナーフーズ計画では、ニンニクが抗ガン食品のトップに選ばれています。
他にも抗酸化作用や動脈硬化予防効果など優れた働きがあります。
生ニンニクは刺激が強く、貧血や潰瘍を起こすことがありますが、低温熟成して抽出した熟成ニンニクでは有用成分の増加とともに刺激成分は消失するので応用範囲が広くなります。
牛黄
牛黄(ゴオウ)は牛の胆石です。千頭に一頭の割合でしか発見されないため、たいへん貴重な動物性生薬です。
味は苦、性質は涼、肝・心に働くとされています。
強心・鎮静・鎮痙・解熱・肝臓保護などの働きにより、心臓や肝臓の不調・血流血圧改善・発熱や炎症・ストレスや自律神経失調などに効果があります。
鹿茸
鹿茸(ロクジョウ)は雄鹿の角化していない幼角です。古来より強壮・強精・長寿を目的とした代表的な高貴薬として珍重されてきました。
味は甘・鹹、性質は温、肝・腎に働くとされています。
補腎益精薬として腎陽・精血を補い、冷え症・貧血・体質虚弱・不妊・足腰の弱り・老化防止などに効果があります。
腎は成長発育・生殖・ホルモンバランス・免疫・新陳代謝全般に関わるので「補腎」は老化防止(アンチエイジング)にはとても大切です。
莵絲子
兎絲子(トシシ)はヒルガオ科マメダオシの種子です。
味は辛・甘、性質は微温、肝・腎・脾に働くとされています。
補腎益精薬として腎虚(腎の弱り)症状に用いる他、目の不調、食欲不振や下痢、妊娠中の安胎などに効果があります。
淫羊霍
淫羊霍(インヨウカク)はメギ科イカリソウの全草です。
味は辛・甘、性質は温、肝・腎に働くとされています。
補腎益精薬として腎虚症状に用いる他、関節痛・痺れ・運動障害に効果があります。
霊猫香
霊猫香(レイビョウコウ)はジャコウネコの分泌物でシベットとも呼ばれます。
麝香(ジャコウ)と同様、気の巡りをよくして、鎮静・強心・鎮痛などの効果があります。
刺五加
刺五加(シゴカ)はウコギ科エゾウコギの根皮です。
味は辛、性質は温、肝・腎に働くとされています。
滋養強壮の働きで疲労回復・足腰や筋骨の強化に効果がありますが、特徴的なのは「気力や意志を強くし、物を忘れなくなる」…すなわち自律神経や中枢神経に対する抗ストレス作用で、精神疲労・不眠不安・集中力持久力の強化・血圧血糖の安定などに効果があることです。
田七
田七(デンシチ)はウコギ科デンシチニンジンの塊根で、三七、田三七、金不換などの別名があります。
味は甘・微苦、性質は温、肝・胃・大腸に働くとされています。
中国やアジアでは肝臓の特効薬である「片仔廣」や、ケガの常備薬である「雲南白薬」の主成分として、たいへんポピュラーな薬草です。
田七には様々な働きがあり、血管外への出血に対しては止血・消炎・鎮痛をしますが、血管内では血栓を溶かし、血管を保護し、血流を改善します。また肝臓や心臓・胃腸の細胞を守るため、肝炎・胃潰瘍・高脂血症・糖尿病・炎症性疾患・出血性疾患にも応用されます。
龍眼肉
龍眼肉(リュウガンニク)はムクロジ科リュウガンの果肉で、料理や菓子にも利用されます。
味は甘、性質は平、心・脾に働くとされています。
気血を補って心臓や胃腸の働きをよくするとともに鎮静作用があるため、疲労・不眠・不安・貧血・動悸・健忘などに効果があります。
茯苓
茯苓(ブクリョウ)は松の根に寄生して成長するサルノコシカケ科マツホドの菌核です。
味は甘、性質は平、心・脾・肺・腎に働くとされています。
利尿・健胃・鎮静作用があるため、浮腫・めまい・動悸・胃内停水・不眠・不安などに効果があります。
霊芝
霊芝(レイシ)はマンネンタケ科の一年生のキノコで『神農本草経』では上品に分類され、命を養う延命の霊薬と位置づけられています。
味は甘微苦、性質は平、心・肺・腎に働くとされています。
滋養・鎮静・止咳作用があるため、滋養強壮・免疫調整・ストレス・不眠・不安・慢性咳嗽・喘息などに効果があります。
黄帝内経の記述
2200年以上も昔の中国の医書『黄帝内経』中の「素問・上古天真論」には「昔の人は百才まで生き、しかも衰えることがなかった。今時の人がもっと若くして衰えてしまうのは何故だろうか。それは常に欲望を追い求め、不規則で消耗の激しい生活をし、飲食に節度というものがないからである」という記述があります。
これは日常生活、特に食生活を省みずに健康や長寿の話をするのは意味がないという教えです。
漢方の「営養学」
現代の栄養学は食品を分析し、その成分や熱量を明らかにするため、栄養のバランスや総カロリー量を重視します。一方、漢方では古来より「医食同源」「薬食同源」という言葉があるように、食物と薬物の境界線が明確ではありません。
紀元前600年頃の書『周礼』には“食医”という医療制度の記述があります。『神農本草経』には、長く服用しても副作用がなく、元気を増し命を養う薬物を“上薬”と分類し、人参や甘草、クコ、ハトムギ、ゴマ、ハチミツ、ナツメ、やまいも、シナモン等を挙げています。これらの多くは食卓に出てくるものです。
『千金要方』では“食治”(食事による治療)という考え方が登場し、食事療法で治らない場合にのみ薬物治療をすべきであると論じています。
こういった歴史的背景のもとに漢方の営養学が存在します。漢方の営養学では、食品の分類は「四気」「五味」「帰経」という独特の概念により行なわれ、これらの組み合わせにより各食品ごとの効能が決定されます。
(「営養」…命を養うための食の営み)
四気
“四気”(寒・涼・温・熱)は、食品が体を冷やすか温めるかを分類するもので、体を冷やし、消炎鎮静効果を持つものを“寒”、その程度の弱いものを“涼”と言います。
寒・涼の食品は、夏の暑い時期、暑がりの人、炎症を持つ場合などに有効です。逆に体を温め、新陳代謝を亢進する効果を持つものを“熱”、その程度の弱いものを“温”と言います。温・熱の食品は冬の寒い時期、冷え性の人、新陳代謝の悪い場合などに有効です。また、これらの中間の性質で、体に寒熱の影響を及ぼさないものを“平”と表現します。
毎日食べる米は平の性質を持ち、誰もが食べられるようになっています。涼の性質を持つスイカは、喉の渇きを癒やし、夏の暑さをしのいでくれますが、過食は冷え症の人にとっては、カキやバナナと同様、下痢のもととなります。逆に、寒い時期にカゼをひいたときなどは、温の性質を持つショウガやネギ、シソが有効となります。
五味と帰経
“五味”(酸・苦・甘・辛・鹹)と“帰経”(肝・心・脾・肺・腎)は、食品の味から効能と臓腑経絡への親和性を分類するもので、酸味のものはストレスを解消したり引き締める作用があり、主に肝胆に働き、苦味のものは炎症を抑える作用があり、主に心と小腸に働き、甘味のものは緊張を緩め疲れをとる作用があり、主に脾胃(胃腸)に働き、辛味のものは発散し血行をよくする作用があり、主に肺や大腸に働き、鹹(塩辛い)味のものは物を軟らかくする作用があり、主に腎と膀胱に働きます。
酸味の梅は下痢や汗の出過ぎを防ぎます。苦味のお茶(コーヒーなども)は胃熱を取るので食後に飲むとよいのですが、胃腸を冷やしやすいので注意が必要です。お腹が冷えやすい子供はピーマ ンなど苦味のものが特に嫌いです。甘味の食品は米やイモ、乳製品など数多く、体の疲れを取ってくれます。辛味のニンニク、ネギは体を温め、カゼを治します。鹹味の貝や海草はしこりや腫れに有効です。
食品の効能表現
例えばやまいもは、四気が平、五味が甘、帰経が脾・肺・腎なので、寒熱に影響を及ぼさずに滋養強壮効果があり、胃腸や肺、腎臓を強くして、疲労、下痢、咳嗽、頻尿、糖尿などの症状に有効だと考えます。
漢方では山薬と言い、強壮薬として八味地黄丸などに配合されています。
調理の意味
食品の四気五味は、調理によりある程度変化させることができます。生食、冷やす、固めるなどの調理は食品の寒涼の性質を強め、加熱調理は一般に食品の温性、補性、潤性を強くすることができます。したがって、冷え性や新陳代謝の悪い人は必ず加熱することが大切です。
また酸味に甘味、辛味に酸味、苦味に辛味、鹹味に苦味、甘味に鹹味を組み合わせるとそれぞれの味と作用をマイルドにし、おいしく食べることができます。
漢方では、人体が活動し新陳代謝を行なえるのは、体内を気・血・津液が常に巡ってるからだと考えます。
特に“気”には新陳代謝の推進、防御免疫、血液や汗や体温のコントロールなどの重要な働きがあるため、生命の維持には不可欠です。人体を構成する気には“天空の気”(空気のこと;肺の力で体内に取り入れられ、気血津液を全身に巡らせる原動力となる)“後天の気”(飲食物から生じる活動力の源;脾で生成される)“先天の気”(生まれながらに持っている生命力;腎に存在し、常に後天の気すなわち飲食物により補給されている)の三種類があり、飲食物は呼吸とともにその重要な構成要素です。
食べ方が大事
食品の内容に気を配っていても、食べ方が間違っていれば健康は守れません。飲食物を運化(消化・吸収・代謝)して、気を生成するのは脾(胃腸)ですので、常に胃腸をいたわり、負担をかけないことが基本です。
具体的には以下の内容を心がけましょう。
「よく噛むこと」
現代人の咀嚼回数は弥生時代の六分の一、戦前の半分と言われています。よく噛んで唾液を出すことにより、消化を助けるほか、粘膜を丈夫にし、殺菌し、歯周病や顎関節炎を予防し、過食を防ぎ、大脳の働きを活性化することができます。
「食事と水分摂取は別にする」
胃液が薄まると消化能力が落ちて胃が弱るとともに、その後の胆汁や膵液分泌にも悪影響を及ぼしますので、食事の前しばらくは水分を摂りすぎないようにしましょう。
「偏らずバランスよく」
健康人の場合はできるだけ多くの種類の食品を偏らず食べることです。一食で難しければ一日、三日、一週間のトータルでバランスをとりましょう。また食事を抜いたり、一度に食べ過ぎたりしないように気をつけましょう。
舌診とは何か
東洋医学では「治病求本(病を治すにその本を求む)」という考えにもとづき、問診・聞診・切診・望診の四診により病状や体質の偏りを判断します。
舌診は四診の中の望診(視診)に属し、舌の形状、苔の状態、舌や苔の色などを総合的に診て、その人の身体および内臓の状態を判断する方法です。
舌は外から見える唯一の内臓であり、体や内臓の状態をリアルタイムで映し出す“鏡”であると考えています。具体的には、舌診により「正気の盛衰」「病気の性質」「病位の深さ」「病気の進退と予後」を判断します。
舌でわかる健康状態
舌の状態(舌象)は「舌質」と「舌苔」の両方で総合的に判断します。
「舌質」で舌神・舌色・舌形・舌態を、「舌苔」で苔色・苔質を分類します。
・舌質とは…舌体とも言い、神経・血管を含む舌本体のこと
・舌苔とは…舌の表面に付着した苔のようなもの
ここでは比較的区別しやすい項目の写真を掲載しています。
一度ご自分の舌を鏡で確認して見て下さい。
毎日診ていると身体の調子によって舌の状態が変化していることが判るはずです。
(舌を見る時の注意)
*舌を見る時は、できるだけ自然に近い光線下で行います。
*口を大きく開けて、舌に力を入れないように出して観察します。
*飲食物が舌や舌苔に着色することがありますので、飲食後の観察は避けます。
舌の色
ピンク
正常
白っぽい
虚証・寒証
赤い
熱証
紫っぽい
瘀血・寒証・熱証
舌の形と特徴
適度な大きさ
正常
大きく厚い
陽虚・痰飲
痩せて薄い
血虚・陰虚
ひび割れがある
虚証
周りに歯形
陽虚・痰飲
斑点がある
瘀血
舌裏の血管が黒い
瘀血
舌苔の色
白く薄い
正常
白く厚い
表証・寒証
黄色く厚い
裏証・熱証
苔がない
陰虚
ご相談の際には、店頭で必ず舌を見せていただいています。
ご遠方の方でも、問診票に掲載している舌の写真で比較していただいたり、
デジタルカメラや携帯電話で撮影した舌の写真をメールでお送りいただいております。
東洋医学では肝・心・脾・肺・腎の五臓の働きとバランスを重視しますが、こと持続力や回復力・免疫力・抗老化力という点では、特に「腎」に着目します。
腎には西洋医学でいう腎臓よりも幅広い働きがあり、成長・発育・生殖能力・ホルモン分泌・免疫力・骨格維持・脳の活動などに関与し、生命活動全般を維持する中央司令室の役割をします。木に例えれば、木の成長・維持をコントロールする根っこの部分に当たります。
腎のエネルギー量(腎精)は先天的に決まっているので、生まれつき虚弱だったり、病気を繰り返したり、予防養生をせず体に負担をかけ続けていると、腎精の減少から全身の機能低下や老化(腎虚:じんきょ)が進んでしまいます。
クルマに例えるとバッテリーに相当するのが腎精です。もちろんクルマはガソリン(活動力の源…食事に相当)で動くものですが、バッテリー充電が不足するとエンジンや電気系統そのものが動かなくなってしまうことからも、腎虚が生命と健康の維持に重要かがお判りいただけると思います。
《腎虚により起こる症状》
●成長発育障害 ●夜尿症 ●虚弱体質 ●冷え・低体温 ●のぼせ・ほてり
●不妊症 ●生理不順 ●更年期障害 ●自律神経失調 ●不眠・不安
●血圧異常 ●息切れ・動悸 ●乾燥性皮膚炎 ●シミ・しわ ●白髪・脱毛
●足腰の弱り ●腰痛・膝関節炎 ●神経痛 ●骨折・骨粗鬆症 ●耳鳴・難聴
●歯の弱り ●眼病・眼精疲労 ●膀胱炎 ●尿漏れ・頻尿 ●腎炎・糖尿病
●慢性のむくみ ●慢性疲労 ●新陳代謝低下 ●気力低下 ●病気が慢性化
●感染症・発熱 ●精力減退 ●動作が鈍い ●認知症 ●口渇・味覚異常
●内臓機能低下
腎虚はおおまかには機能低下・老化症状ですが、子供や若い人でもたいへん多く存在しています。
また、お肌の若返りという意味合いでアンチエイジングという言葉が最近よく使われますが、本来アンチエイジングとは抗老化という意味で、お肌だけでなく全身の老化をコントロールする(遅らせる)ことが本来の目的です。
生物は加齢を止めることができませんが、人間の場合は努力により老化のスピードを変えることができます。実年齢が60歳でも肉体年齢では50歳の人もいれば70歳の人もいます。前者はまさに抗老化に成功している人で、その特徴は「肉体年齢が若い」「実年齢よりも若く見える」ことです。こういった人は老化のカーブが緩やかなため、体の故障が少なく、長生きする可能性が高いのです。
腎虚を治す・予防することを「補腎」といい、腎に力を与えるのが「補腎薬」です。補腎薬は同時に内臓・血管・神経・骨・免疫を強化する働きもあるので、まさに抗老化(アンチエイジング)の主役といえます。
抗老化(アンチエイジング)は一日にして成らず…しかし、できるだけ若いうちから生活に気を付け、補腎を継続できれば3~5年後の変化(肉体年齢の若返り)は明らかです。
《腎の弱り(腎虚)をチェックしてみましょう》
A1 耳鳴り・難聴・聴力低下がある
A2 腰や膝がだるい・痛い
A3 不妊・流産・精力減退がある
A4 物忘れが多い
B5 冷え症・しもやけがある
B6 頻尿・夜間尿・むくみやすい
B7 舌が白っぽく、縁に歯型がある、白い苔がある
C8 のぼせ・ほてり・夕方からの熱感がある
C9 のどの渇き(特に夜間)・寝汗をかく
C10 舌が赤い・舌の表面に裂け目がある
Aが多いのは … 腎虚・腎精不足
Aが多い+B一つ以上 … 腎陽虚
Aが多い+C一つ以上 … 腎陰虚
ABC全てに一つ以上 … 腎陰陽両虚
と考えられます。該当の項目が多い方は店頭でご相談下さい。