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井口薬局

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漢方コラム

不妊と二人目子宝

不妊でお悩みの方へ

WHO(世界保健機構)の調査では不妊症の男女別原因は女性側が41%、男女共が24%、男性側が24%、原因不明が11%です。
私に原因があるのでは?と悩まれている女性の方は多いのですが、男性に原因がある場合も増えています。

女性からのご相談

不妊症の原因がはっきりしている場合(高プロラクチン血症・多嚢胞性卵胞症候群・黄体機能不全など)はその原因を改善するとともに、子宮や卵巣を元気にする漢方薬を使用します。

原因がはっきりしない場合は生理の周期別に、生理期は子宮内膜をきれいに排出させる・低温期は卵の発育を促す・排卵期は排卵をスムーズにする・高温期は着床を維持させる漢方薬を、それぞれの周期にあわせて使い分けます。

男性からのご相談

生活状況をお聞きしたうえで、疲労やストレスを軽減させながら腎気や精気を補う漢方薬を使用して、精子の質を高めたり機能障害を改善させます。
赤ちゃんが欲しいご夫婦は、母体父体とも健康な心と体であることが前提となります。
漢方薬の服用と並行して、妊娠力をアップさせるのに必要な生活リズム・食生活などの養生法をお知らせ致します。
なお、ご相談の際は問診票とともに基礎体温表、おくすり手帳、これまでの検査結果などをご持参下さい。

後鼻漏について

このような症状はありませんか?

□鼻水がのどに流れる  □のどがいつも痛い  □声がかすれる・枯れる
□のどがイガイガする  □いつも痰がからむ  □常に鼻炎がある
□のどに違和感がある  □口の中がネバつく  □咳が長引いている

あまり聞き慣れない病名ですが、後鼻漏(こうびろう)とは正に「後ろ(のど)に鼻水が漏れる(流れる)」という症状を言います。
後鼻漏は急性や慢性副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)の一つの症状として表れます。鼻汁は痰よりも粘り気が強いため切れにくく、咳き込みや咳払いの原因になり、とても不快な症状です。
後鼻漏自体は鼻の病気なのですが、鼻にはとても大事な役割があるため、鼻が悪いとさまざまな体の不調を引き起こすことがあります。

「鼻呼吸の役割」

*加温・加湿・清浄化した空気を肺に送る
*臭いを感じる

「鼻呼吸ができないと(口呼吸)」

*のど・肺で細菌感染が起こる
*肺呼吸(ガス交換)効率が低下する
*臭い・味覚の感覚が低下する

「口呼吸の全身への影響」

*感染症や各部炎症が悪化する
*内臓・細胞・脳で酸素不足が起こる
*凝り・痛み・病気の原因になる

だから、鼻がよくなればこんな症状も改善する可能性があります。

○のど痛    ○長引く咳  ○胃もたれ  ○疲労感  ○不眠
○のど不快感  ○咳ぜんそく ○ムカムカ ○無呼吸 ○目の痛み
○味がしない ○気管支炎 ○下痢   ○肩こり  ○頭痛頭重
○匂いがない ○いびき ○めまい ○耳鳴り ○炎症悪化

たとえ後鼻漏という自覚がなくても、上記の症状や黄色い痰が続いたり咳がなかなか治らない場合は後鼻漏を疑います。黄痰が肺から出るようになればそれは肺炎や結核であり、高熱が出たり息苦しくなったり大変なことになります。

実際に後鼻漏をわずらう人はとても多く、ある耳鼻科では受診者数の7割にのぼっています。多くの病院では主に抗生物質やステロイド剤を使い、さらに上咽頭炎を疑い、綿棒で擦過療法を行ない、それでも治らなければ手術を施すこともあります。

当店では副作用のない天然薬を用い、その原因から治療します。さらに適切な生活習慣の改善をすることで治りも早くなります。頑張って治していきましょう。症状や体質の違いにより治療法・治療薬が変わりますので、まずはあなたの症状をじっくり聞かせて下さい。

日本人に多い鼻の病気

店頭で問診していると「鼻の悪い人が多いな」「鼻が悪いと気づいていない人が多いな」とよく感じます。例えば、いわゆる鼻たれ小僧がいた時代と比べるとちくのう症(慢性副鼻腔炎)などは減っていそうなものですが、初期症状も含めると今でも年間一千万人以上が発症していますし、鼻炎や後鼻漏を合わせると鼻の病気は昔よりも明らかに増えています。

ちくのう症に関していえば昔は黄色い鼻汁のタイプが多かったのですが、今は必ずしも黄色い鼻水が出ないうえに治りにくい好酸球性副鼻腔炎が増加してきています。このタイプは嗅覚障害やゼンソクを起こすことが多いので、たかが鼻炎とあなどらないことが大切です。

《日本(人)に鼻の病気が多い理由》

気候風土 …漢方では、鼻は肺や胃腸と関係が深く(実際に粘膜が繋がっている)鼻の病気を治す場合は特に胃腸をいたわることを重視します。
そして胃腸は湿気によって機能が低下しやすい臓器であるため、多湿の日本では胃腸の不調が多く、さらに関係の深い鼻・肺も弱りやすいのです。鼻と肺・胃腸に関連があることは、入浴などで胸や腹が温まると鼻の調子がよくなることでも実感できます。

現代の食習慣 …湿気に弱い胃腸をさらに弱めているのが現代の日本人の健康常識・飲食習慣です。
漢方では際限のない水分摂取は胃腸を弱める(冷やす)とともに、水が体に必要な津液(しんえき)に変化せず、痰飲(たんいん)という病気の原因物質になると考えます。痰飲は咳・痰・鼻水・頭痛・めまい・むくみの原因にもなります。現代医学から見ても心臓病や腎臓病の人は水分摂取量に注意する必要がありますし、水分を尿として排泄する時には腎臓・膀胱が働かねばならず、そのうえ体の熱を奪って出ていくのですから、やはり水分の取り方には注意が必要です。また、生野菜やサラダ・果物・ヨーグルトなど、栄養素以外に冷えと水分をもたらすものを大量に摂るのがヘルシーだという意識にも問題があります。
さらに「しっかり噛まない」「唾液を出さない」食べ方が致命的です。

日本の気候風土においては、このような飲食習慣が胃腸を弱め、肺を弱め、鼻を弱めています。

《鼻の役割とは》

鼻は体に酸素を取り入れる呼吸器であり、臭いを感じる感覚器です。これに対して口は物を食べる消化器ですが、進化により言葉を話すようになった人間は口でも呼吸ができます。【画像②】
鼻から取り入れた空気は副鼻腔(鼻の奥、ほお骨の下にある空洞)で塵を除去、加温加湿されたうえで肺に送られます。口呼吸ではこういった行程が飛ばされることになります。また鼻呼吸は口呼吸に比べて空気吸入量が増えるので肺に取り込まれる酸素量も多くなり、深くて質のよい呼吸ができます。逆に鼻づまりなどで日常的に口呼吸が続くと、のどや肺で炎症が起こりやすくなったり、酸素不足により体に様々な悪影響が出てきます。

《鼻に関連して起こる(悪化する)症状》

慢性鼻炎・花粉症・アレルギー性鼻炎・慢性副鼻腔炎など鼻の病気があると様々な症状が引き起こされます。

鼻づまり  ⇒ 口呼吸・集中力低下・嗅覚味覚障害
目・耳   ⇒ 目の奥の痛み 眩暈 耳閉感 耳鳴り 中耳炎
鼻汁・細菌 ⇒ 後鼻漏 咳 気管支炎 喘息 胃腸障害 誤嚥性肺炎 慢性閉塞性肺疾患 腎臓病 リウマチ
口呼吸   ⇒ 口臭 口内炎 歯周病 ドライマウス のど痛 いびき 睡眠時無呼吸症候群
酸素不足  ⇒ 頭痛 肩こり うつ 不眠 倦怠 パニック障害

生命維持に不可欠である酸素は、鼻呼吸でこそ供給できるものです。口呼吸では全身に酸素不足が生じ、あらゆる病気の原因となる可能性があります。

《あいうべ体操が教えてくれること》

最近、小学校で実践したらインフルエンザに罹る児童が激減したという体操があります。
体操といっても動かすのは口と舌で、口を大きく開けて「あ~い~う~べ~」と動かすというもので、1回5秒程で1日30回(約3分)を目安に続けます。
これでなぜインフルエンザに罹らなくなったかというと、口周囲の筋肉が鍛えられて口が閉じ、鼻呼吸になるからです(唾液が出やすくなるという効果もあります)。インフルエンザ以外にも、先ほど挙げた病気のほとんどに効果があります。あいうべ体操は、まさに鼻呼吸の大切さ…口呼吸から鼻呼吸に変えることで病気の予防ができることを示してくれているのです。

「あいうべ体操」のやり方




《養生法の基本》

あいうべ体操に効果があるということは、現代人(特に子供)にいかに口呼吸が多いかということです。
ただ、体操で鼻呼吸ができるようになっても、鼻粘膜の状態がよくないと継続することができません。鼻-肺-胃腸をいたわる養生法で、根本から鼻粘膜をよい状態に保ちましょう。

水分の取り方 … 食事中は控える 唾液を混ぜて飲む 冷飲を控える 必要量を一口ずつ飲む
食事の取り方 … 生冷食品は少なめに よく噛む 飲み込むまで次の食べ物を口に入れない
酢の物で唾液を出す 具材は大きく硬いもの
呼吸その他  … 背筋を伸ばして深呼吸 適度な運動
鼻-肺-胃腸  … 食べ物と漢方薬で脾・肺・腎を補う
漢方薬で鼻の炎症・鼻づまりを治し、粘膜を強くする

《鼻の病気?チェック》

コラム冒頭で 「鼻が悪いと気づいていない人が多い」 と書きました。口呼吸が普通になっているとそれが当たり前になってしまうため自覚症状がないんですね。
いちど以下の項目をチェックしてみて下さい。

□ カゼの後、鼻汁・鼻づまり・のど痛・せきが残る
□ 温度差でくしゃみや鼻づまりが起こる
□ 鼻を片方ずつ押さえ呼吸すると一方が詰まる
□ 鼻水がのどに流れる
□ 鼻声・声がれになる
□ のどに痰がからむ
□ 時々鼻をすする
□ アレルギーがある
□ よく咳払いをする

ふたつ以上あてはまる人は鼻炎や後鼻漏の可能性があります。
鼻が悪いと気づいていない人でも、漢方薬の服用で鼻呼吸ができるようになると 「鼻が詰まっていたんだ!」 「こんなにすがすがしいとは!」 と感動されます。詳しくは店頭でお尋ね下さい。

男は血管、女は筋骨

「男は血管、女は筋骨」…どういう意味だか分かりますか?

この言葉はヒトが寝たきりになるもっとも大きな原因を言い表しています。逆に言うと日本人が高齢期において注意しなければならない最大のポイントが血管であり筋骨なのです。
高齢者が生活機能を失う…すなわち寝たきりの要介護状態になる原因は男性は圧倒的に「脳卒中」で、4割以上を占めます。対して女性は「高齢による衰弱・虚弱」「転倒・骨折」「関節疾患」が5割以上を占めます。
要するに男性では血管の過剰な老化や病変が、女性では筋力低下・骨粗鬆症などの運動器の老化や病変が体の自由を奪い、要介護状態を作るのです。

このことを東洋医学では以下のように考えます。

 

女性の場合は、加齢と共に五臓の中で特に「腎」と「肝」が弱りやすくなるため、「腎」の働きである体力・免疫力・生殖能力・骨形成・ホルモン分泌等に加え、「肝」の働きである筋肉形成と維持、血流と自律神経の調整能力が低下し、運動器の弱りが進みやすくなります。
したがって女性の老化・寝たきり対策には
食事…タンパク質やミネラル補給を中心に
運動…筋肉低下を防ぐストレッチを中心に
漢方…補腎剤・補血剤・補陽剤・理気剤

等によって「腎」と「肝」を守ることが基本となります。

一方、男性の場合は加齢と共に五臓の中で特に「腎」と「心」が弱りやすくなるため、「腎」の働き(前述)に加え、「心」の働きである脳や血管を維持する能力が低下して、循環器と血管の弱りが進みやすくなります。
したがって男性の老化・寝たきり対策には
食事…炭水化物・脂肪・アルコールのコントロールとタンパク質補給が中心に
運動…全身の血流を改善する運動が中心に
漢方…補腎剤・補血剤・補陰剤・活血剤
等によって「腎」と「心」を守ることが基本となります。

こころの病

店頭でたいへん多いご相談に「心の病」があります。軽症から重症の方まで、多くの方が相談時に安定剤や抗うつ剤を服用されているのですが、決してよくなっておられないのはなぜなのでしょうか。
例えばうつ病の場合、英国では「カウンセリング」「本人に原因を認知させて解決行動を探る」「補助的に投薬する」という流れがあるのですが、日本の場合、精神科や心療内科では薬物療法が中心で、うつの原因を解決する方法を提示しないためだといわれています。が、これまでの臨床経験から、私は漢方薬・自然薬と行動療法でかなりの症状改善と再発防止が可能だと考えています。

人はストレスを受けると…

・易怒、不眠、不安、焦燥、物忘れなどの精神症状
・頭痛、肩こり、胃腸障害、皮膚炎などの身体症状
・飲酒、大食、拒食、暴力、無気力などの行動症状

が現れます。ストレスが強かったり長引くと身体症状から内臓疾患や代謝疾患を引き起こしますし、逆に忙しい生活や休息できない状況が続くとストレスに対する防御力が弱くなり、精神症状や行動症状からうつ病を引き起こします。
「心」と「体」は同じ器の中に入っているので、一方だけが影響を受けたり弱るということはないのです。
そこで、店頭では常に両方のバランスを取る養生法・治療法をご紹介しています。

『養生法』

人間には自律神経が自動制御している体内(日内)リズムが存在します。
交感神経が優位なとき…ストレス状態(細胞自傷・血流体温低下・血糖血圧上昇・精神興奮)
副交感神経が優位なとき…リラックス状態(細胞修復・血流体温上昇・血糖血圧低下・精神安定)

昼間の交感神経優位、夜間の副交感神経優位は変えることができないので、そのことを理解していただいたうえで生活養生を行います。基本的には副交感神経優位を目指すのですが、具体的な実践(行動療法)については店頭で生活状況を確認したうえでアドバイスしています。

『治療法』

①体の側から…漢方補益剤その他を使用して、体力・内臓力・免疫力をアップさせるとともに、交感神経緊張による血管や内臓細胞の自損自傷から体を守ります。
②心の側から…漢方安神剤や処方薬を使用して、自律神経の偏りや回復力を高めるとともに、ストレスに対する対応力を高めます。
③栄養面から…食事内容に不足や偏りがある場合は是正(内臓や神経細胞が新陳代謝できるように)するための補助食品を使用し、①②を補佐します。

①と②は必ず同時服用してもらいます。どちらか一方では効果は半減します。
よくなる時間に個人差はあっても、養生法・治療法の継続で多くの方は症状が改善し、また治療薬服用を減少~中止できています。
ただ、この時点ではまだ治りかけなので、安心して養生・治療法を止めてしまうと再発します。治ったといえるのは再発しなくなったときです。
当方の養生・治療法で症状が改善し、新薬も服まないでよくなり、再発を免れている人たちの多くは以下のことが実践できています。

*原因(過労・体力低下・体質や生活の偏り・対人関係・精神疲労)とその結果現れる症状を理解・受容し、原因を減らしたり転換したりする方法を身に付けている(認知行動療法)
*心身にとって絶対的不利となる「内臓の弱り」「体の冷え」「睡眠不足」に常に注意している
*心身を守るための①②を継続服用し続けている

残念ながらストレスや疲労がなくなることが難しい現代の社会です。防御力を高める漢方薬・自然薬、対処力を高める養生法と行動療法こそが「症状改善」と「再発防止」のカギになると考えます。
詳しい話をお訊きになりたい方は店頭でどうぞ。

女性特有の病気

今回は女性特有の体質について考えてみます。
生理痛や更年期障害はもちろんですが、男性と比べて圧倒的に女性に多いのが関節リウマチ・骨粗鬆症・貧血・偏頭痛・関節炎・甲状腺疾患・腎臓病・うつ病などの病気です。これらの病気が女性に多い理由は詳しくは判っていませんが、今回は東洋医学の考え方からその理由を探ってみましょう。

漢方では、体にはり巡らされた経絡(けいらく)という循環路を気(き;活動のエネルギー)・血(けつ;全身の栄養になる滋養物質)・津液(しんえき;体液)がよどみなく流れることにより、また腎に蓄えられている精(せい;生命活動を支える基本物質)が充実していることにより、全身組織や五臓六腑は正常に働き、健康を維持できると考えています。なかでも…

血は血液であるとともに以下の働きを担っています。
①全身組織や筋肉に栄養と潤いを与える
②ホルモン分泌を調節する
③精神・情緒を安定させる

また精(腎精;じんせい)には以下のような働きがあります。
①成長・発育・生殖機能を促進する(ホルモンの働き)
②生命力・免疫力・抵抗力の元となる
③腎・骨・関節・脳の機能を維持する

血と精はいずれも飲食物の栄養分から造られるのですが、血が不足すると精が血に転化し、精が不足すると血が精に転化して互いを補充し合う関係にあります(精血同源)。このような関係にあるのは血と精の充足が生命維持に重要な役割を担っているとともに、実際に不足を生じやすいからです。

東洋医学では女性の体質は7年毎に節目を迎えると考え、これは現代医学の女性ホルモンによる月経・妊娠・更年期のサイクルとほぼ一致しています。
女性のこういったサイクルや病気を考えるときに考慮すべき最大のポイントは、月経により人生の一定期間で血の不足を起こしやすいということです。
不足した血は通常、飲食物から補充するのですが、体質・食事・生活に偏りがあると十分な補充ができず、腎精を血に転化させて補充するため、結果的に腎精の不足も引き起こしてしまいます。
そのため…

血の不足により(前述の血の働きに呼応して)
①貧血・生理不順・偏頭痛・冷え・乾燥肌・ドライアイ
②甲状腺疾患(バセドウ病・橋本病)・のぼせ・動悸
③うつ・不眠・不安・パニック障害

精の不足により(前述の精の働きに呼応して)
①不妊症・更年期障害
②リウマチ・膠原病・アレルギー疾患・ガン
③骨粗鬆症・関節炎・腎臓病・健忘症・認知症

などの病気を発症しやすくなるのです。

極端な例ですがハードな練習をする女性アスリートに起こる無月経や骨粗鬆症も同様の理由です。
またリウマチなどは患者の80%以上が女性ですが、これも男性に比べ血や精の消耗が激しく、その不足が体力・抵抗力の低下と免疫異常をきたして発症するものと考えられます。もちろん、これらの疾患は血や精の不足が起これば男性でも発症します。

したがって、これらの病気を予防したり、治癒に向かわせるためには、以下の養生が必須です。

*血と精を消耗してしまう行動に注意すること
…過労・睡眠不足・夜勤・心労・ストレス・大量発汗・手術・出血など
*血と精を造り出す食事をおろそかにしないこと
…タンパク質は毎食欠かさず摂取する
*血を貯蔵する「肝」、精を貯蔵する「腎」、血や精を造り出す「脾胃」の働きを補う漢方薬を服用する

(補遺)
漢方には「正気 内に存すれば、邪 侵すべからず」という言葉があります。これは『体に気・血・津液・精がしっかり備わり不足がなければ、病気が侵入する余地はない』という意味で、健康を守るうえで必要なものが不足することの怖さを表しているともいえます。
過労や睡眠不足(不眠)、ストレスや心労、持病や手術などはすべて気・血・津液・精の不足をもたらします。
また、食料品の豊富さから不足はないと思われている現代の食においても、栄養の偏りはむしろ酷くなっていて、細胞や血液・ホルモンの原材料になるタンパク質の摂取不足は特に深刻なものがあります。
こういった現代生活が血と精の不足をもたらし、さらに女性は生理による出血がそれを加速させるため、治りにくい病気を生み出しているのだといえるでしょう。
ちなみに私は男ですが、体質的に血や精が少ないので消耗予防と補給は常に心がけています。

冷え症の分類と対策

西洋医学では病気と見なされず決め手となる治療法のない冷え症ですが、東洋医学ではタイプ(証)別に漢方薬や養生法があります。
人体は、身体を温める気(陽気)と身体を冷やす血(けつ…陰液)のバランスが取れてはじめて健康体だといえるので、気血の不足や停滞は冷え症の原因になります。また気血のバランスの崩れにより寒邪や湿邪が侵入する場合も冷え症の原因になります。

①脾陽不足証

胃腸が弱く、疲れやすいタイプ。胃腸をいたわりよくかんで食べる、水分を摂りすぎない、温性食品を摂り寒性食品を控える、必ず3食食べる、ダイエットしない、睡眠不足を避ける、汗をかきすぎないことが大切です。

②腎陽不足証

体力が低下し、足腰膝や泌尿器に症状が出るタイプ。しっかり休息を取り補腎薬を補う、水分を摂りすぎない、温性食品を摂り寒性食品を控える、ダイエットしない、睡眠不足を避ける、汗をかきすぎないことが大切です。

③血虚受寒証

栄養が不足し、しもやけや貧血・肌荒れを起こしやすいタイプ。よくかんで食べる、温性食品を摂り寒性食品を控える、良質のタンパク質やミネラルを摂る、ダイエットしない、睡眠不足を避けることが大切です。

④肝鬱気滞証

忙しかったりイライラすると冷えるタイプ。睡眠不足を避ける、夜間に仕事をしない、気分転換をはかる、適度な運動をする、脂っこいものや味の濃いものを控えることが大切です。

⑤血瘀阻絡証

あざができやすく凝りや痛みがあり、冷えるとのぼせるタイプ。睡眠不足を避ける、夜間に仕事をしない、適度な運動をする、脂っこいものや味の濃いものを控える、タバコや濃い酒を控えることが大切です。

⑥寒湿阻滞証

むくみやすく、冷房に弱いタイプ。冷房や冷える環境・多湿の環境を避ける、夜間や雨天時の作業を避ける、水分を摂りすぎない、温性食品を摂り寒性食品を控える、適度な運動をすることが大切です。
 
全てのタイプに必要な養生は「体を冷やさない」「睡眠不足を避ける」「タンパク質を積極的に摂る」「筋肉運動を毎日行なう」ことです。
 
④~⑥は温めても治らないタイプです。
また①~⑥は複合して現れることもありますので、詳しくは店頭でご相談下さい。冷えは単なる症状ではなく、免疫力や抵抗力の低下をはじめ、自律神経失調や神経痛、めまい、肩こり、便秘、下痢、生理痛、不妊など様々な病気を引き起こします。病気になる前(未病)の段階で治しましょう。
 
(店頭症例から)
Aさんは潰瘍の薬を服んでも胃痛が全く治りませんでした。鼻が詰まって口呼吸になり冷気が直接胃に入り込んだのが原因で、胃を温める漢方薬で治りました。
Bさんは持病のゼンソクが一晩で悪化しました。原因はコーヒーとカレーの取りすぎ(両者ともお腹を冷やす)で、胃腸と肺を温める漢方薬で楽になりました。
…このように冷えというものは案外コワイものです。油断は禁物ですよ。

風邪のタイプ

漢方ではカゼを症状ごとに分類し、そのタイプに応じたケアをします。この分類はインフルエンザや慢性鼻炎、花粉症でも有効です。

①青いカゼ(風寒)

ゾクゾクする寒気があり、鼻水・くしゃみ・頭痛がするいわゆる冬カゼタイプ(青白い顔色が多い)です。
体を温めながら発汗させます。生冷物や冷たい飲み物は控え、ネギやショウガで発汗を促しましょう。
漢方薬では香蘇散・葛根湯・麻黄湯などを使います。

②赤いカゼ(風熱)

のどの腫れや痛み、急な発熱~高熱など流行性感冒や冬カゼ悪化時、夏カゼで見られるタイプ(赤い顔色が多い)です。
このタイプは熱を冷まし、炎症を抑えることが必要です。食材では菊花やミントを加えたお茶や大根・キュウリなどがお薦めです。
漢方薬では銀翹散・桑菊飲・麻杏甘石湯などを使います。

③黄色い風邪(風湿)

下痢や吐き気を伴うカゼで、ウイルスにより胃腸粘膜が炎症を起こすタイプ(黄色い顔色が多い)です。
このタイプは体内に滞っている余分な水分を取り除くことが重要です。食材ではシソやショウガがお薦めです。
漢方薬では藿香正気散・柴苓湯などを使います。

④年中のカゼ(虚証)

しょっちゅうカゼをひいている、常に鼻水や鼻づまりがあるというタイプです。
過労と冷え、水分の摂り過ぎに注意する必要があります。漢方薬では玉屏風散・補中益気湯などを使います。

 

漢方薬は服用のタイミングが遅れる(時機を逸する)と効果が現れにくくなりますので、適切に対処するためには基本的な漢方感冒薬は常備されておくとよいでしょう。

正気と邪実

これから感染症が増加する季節ですが、近年は幼児から高齢者にいたる幅広い年齢層で様々な感染症が流行していますね。インフルエンザはもちろんのことノロウイルス、O157、RSウイルス、結核、風疹、麻疹、デング熱…最近ではコロナウイルスも話題になりました。

その感染症を東洋医学ではどのように考えているのでしょうか?
漢方理論は現代のように検査や診断機器のない時代に構築されたものなので、病気と治療に対する考え方はいたってシンプルです。

①体内に邪魔なものが侵入する(邪実)と病気を起こす。これは除いて治す。
②人体に必要なもの(正気…気・血・津液・精)が不足する(正虚)と病気を起こす。これは補って治す。

これを現代医学に当てはめると…

①邪実はまさに病原菌の感染による病気
②正虚は体力・抵抗力の不足による病気 を指します。

さらに邪実(感染症)と正気(免疫力)の関係について

「正気 内に存すれば 邪 侵すべからず」
「邪の集まるところ 気 必ず虚す」
という言葉があり、
『体に体力免疫力があれば病原菌は侵入しない(侵入しても退治できる)』
『感染症にかかると体力免疫力は必ず損なわれる』
ということを示しています。

同じ感染症にかかっても軽症ですむ人と重症化してしまう人がいるのは、まさに正気(すなわち体力・体質・抵抗力・免疫力・自然治癒力)が充実しているかどうかの差だといえるでしょう。

特に高齢者の場合、普段持病がなく、見た目は元気でも、老化により外敵に対する免疫力は幼児と変わらないレベルまで低下しているため、いったん感染症にかかると重症化する傾向にあります。
そのため老人の感染症(誤嚥性肺炎やMRSAなど)は「内因性感染症」とも呼ばれるのです。

邪実から身を守る(感染症感染を予防し、重症化を低減する)には正気(特に腎精)の充実が第一です。

 

*腎精を充実させる漢方補益剤の補給
*正しい呼吸+正しい食事+適度な運動

を心がけましょう。詳しくは店頭でお尋ね下さい。

五臓と顔色

漢方…東洋医学の源流は陰陽五行論という東洋哲学思想にあります。
陰陽とは月と日(太陽)、五行とは木・火・土・金・水で、面白いことにこれらを合わせると曜日一週間の名称が出来上がります。現代中国ではこの名称は使われていないのですが。

漢方もこの考えに則って五分類(その各分類に陰陽が存在する)が基本です。五分類の最も代表的なものが「五臓」で、五臓に対応して感情、味覚、声、食物、色、季節などあらゆるものを五行に配当しています。この分類は、臨床上ではおおむね有効かつ実用的です。今回はその一部を紹介するとともに「五色」について解説します。

五行 : 木 火 土 金 水
五臓 : 肝 心 脾 肺 腎
五色 : 青 赤 黄 白 黒
五季 : 春 夏 土用 秋 冬

(…青春や白秋という言葉も五行論からのものです)

『五臓と顔色の関連について』

体調が悪いと青くなったり、興奮すると赤くなったり、顔色はその時々の体調…特に内臓の状態が現れます。顔色の変化に気づくことで早い段階で病気予防や健康づくりに役立てることができます。

①顔色が青い(肝)

肝が弱ると血液浄化作用が不十分となり、肌や血管が青っぽく見えます。目や筋肉、自律神経にも症状が現れやすくなります。検査数値は本当に悪化してからようやく上昇するので、正常値のうちに養生しておくことが大切です。
⇒ストレスをためないよう注意し、リラックスできる時間を持つこと、睡眠を十分取ることが大切です。緑黄色や香味の野菜、大豆や魚などの良質なタンパク質を摂りましょう。アルコールはほどほどに。

②顔色が赤い(心)

心が弱ると心機能とともに精神活動(こころ)が失調しやすくなります。精神的な興奮や血圧上昇、血行障害などで顔色が赤くなります。さらに心筋梗塞や脳梗塞、不眠、不安、健忘などの症状も現れやすくなるので要注意です。
⇒睡眠を十分取り、血流改善のために毎日歩くことを心がけましょう。ネギ類や青魚を摂り、香辛料やアルコールは控えましょう。

③顔色が黄色い(脾)

脾(胃腸)が弱り、消化力が低下すると、顔色や白目部分が黄色っぽくなります。弱りがひどいと黄疸のように見えたり、貧血症状や胃腸病、吹き出物~皮膚炎、口内炎、皮下出血、下痢~便秘などが現れます。
⇒和食中心に、よく噛んでゆっくり食べるようにしましょう。食事前後は水分摂取を控え、消化吸収代謝を助けることと食べ過ぎないことが大切です。

④顔色が白い(肺)

色白の人は呼吸器(肺)や皮膚が弱く、そのために感冒や鼻炎、ゼンソク、皮膚炎を起こしやすくなります。慢性の皮膚炎は内臓の不調が原因なので、ステロイド外用薬を使っても完治しません。
⇒冷えがあると気管支が狭くなりやすいので、体の冷えと生冷物や果物などの摂り過ぎに気を付けましょう。また姿勢が悪かったりストレスが多いと呼吸が浅くなり疲れやすくなるので要注意です。

⑤顔色が黒い(腎)

腎が弱ると、顔色がどす黒くなってきたり、目や頬・腰回りが黒ずんできます。免疫力の低下や頑固な冷え・低体温も腎の弱りです。腎は加齢や不摂生で衰弱するので、生活全般の見直しが必要です。
⇒黒豆、黒ごま、大豆、山芋、海藻、小魚キノコなど、良質のタンパク質やミネラルをバランスよく摂ると同時に、ストレッチや運動で毎日少しずつ足腰(筋肉)を鍛えることが大切です。

五臓と季節

東洋哲学の源流には陰陽五行論という思想があり、東洋医学(漢方)もこの考えに則って五分類が基本となっています。五分類の最も代表的なものが五臓で、五臓に対応して感情、味覚、声、食物、色、季節などあらゆるものを五行に配当しています。
この分類は、臨床上おおむね有効かつ実用的です。以前は「五臓と五色」について述べましたが、今回は「五臓と季節」について解説します。

五行 : 木 火 土 金 水
五臓 : 肝 心 脾 肺 腎
五季 : 春 夏 土用 秋 冬
五悪 : 風 熱 湿 燥 寒

 

『五臓と季節・気候について』

季節の移り変わりがある中国や日本では、必ず季節により増える病気や不調というものがあります。各臓器の弱りやすい時季を憶えておくと早い段階で病気予防や健康づくりに役立てることができます。

①肝は春に弱りやすい

肝には全身の内臓や神経バランスを整える働きがあります。特に風の影響を受けて春に弱りやすく、肝臓病・自律神経失調・うつ・不眠・血圧異常・生理不順・めまい・疲れ目・肩こりなどが悪化します。
外風の影響を避けるためには風に当たらないこと、内風の影響を避けるためにはリラックスする時間を持つことと睡眠を十分取ることが大切です。

②心は夏に弱りやすい

心には血管血流を維持し、精神活動をコントロールする働きがあります。特に熱の影響を受けて夏に弱りやすく、心疾患・血圧異常・動悸・不眠不安・精神障害・健忘などが悪化します。
熱の影響を避けるためには直射日光を避け、辛いもの・脂っこいもの・酒を減らし、睡眠を十分取り、血流改善のために毎日歩くことが大切です。

③脾は土用に弱りやすい

脾には飲食物を消化吸収して栄養や血液に変える働きがあります。特に湿の影響を受けて土用(立春・立夏・立秋・立冬前の18日間…季節の変わり目のこと)に弱りやすく、胃炎・下痢便秘・アレルギー・貧血・下血・免疫疾患などが悪化します。
湿の影響を避けるためには湿気の多い環境を避け、水分や脂っこいものを減らし、和食中心によく噛んでゆっくり食べることが大切です。

④肺は秋に弱りやすい

肺には呼吸と全身の気や水分の流れを調節する働きがあります。特に燥の影響を受けて秋に弱りやすく、カゼ・ゼンソク・鼻炎・乾燥肌・ジンマシンなどが悪化します。
燥の影響を避けるためには乾燥しないように加湿したり、汗をかきすぎないようにすることが大切です。また体の冷えと生冷物や果物などの摂り過ぎにも気を付けましょう。

⑤腎は冬に弱りやすい

腎には成長・発育・生殖・新陳代謝・体温などを維持し高める働きがあります。特に寒の影響を受けて冬に弱りやすく、腎臓病・膀胱炎・免疫疾患・更年期障害・冷え・腰痛・老化・難聴・耳鳴り等が悪化します。
寒の影響を避けるためには冷えないようにし、体温以下の飲み物や生もの・生野菜・果物を摂りすぎないことと良質のタンパク質やミネラルをバランスよく摂ること、また睡眠や生活リズムを含む生活全般の見直しが必要です。ストレッチや運動で毎日少しずつ足腰(筋肉)を鍛えることも大切です。

五臓の中で弱いところがあったり持病をお持ちの方は、特に関連する季節に注意して、また養生を心がけながら過ごしましょう。

五臓と感情

東洋哲学の源流には陰陽五行論という思想があり、東洋医学(漢方)もこの考えに則って五分類が基本となっています。五分類の最も代表的なものが五臓で、五臓に対応して感情、味覚、声、食物、色、季節などあらゆるものを五行に配当しています。
今回は「五臓と感情(五志)」について解説します。

五行 : 木 火 土 金 水
五臓 : 肝 心 脾 肺 腎
五志 : 怒 喜 思 悲 恐

 

『五臓と感情の相関関係』

①怒りは肝と関係が深い

怒りやストレスは肝を弱め、めまい・耳鳴り・不眠・筋肉痛・目の弱り・血圧異常・生理不順などを起こしやすくなります。逆に肝が弱ると、怒りやストレスを制御できなくなるとともに自律神経症状・更年期症状などが現れます。

 

②喜びは心と関係が深い

喜びや興奮が過度になると心を弱め、息切れ・動悸・不整脈・血流障害・血圧異常などを起こしやすくなります。逆に心が弱ると、不眠・不安・健忘・うつ・興奮・精神障害などが現れます。

 

③思慮は脾と関係が深い

物事を考えすぎると脾(胃腸)を弱め、食欲不振・胃痛・吐き気・便秘・下痢・代謝障害・むくみなどを起こしやすくなります。逆に脾が弱ると、不眠・無気力・思考力低下などが現れます。

 

④悲憂と肺は関係が深い

悲しみ憂いが大きいと肺を弱め、息切れ・咳・倦怠感・感染症などを起こしやすくなります。逆に肺が弱ると、悲しみ・憂慮・意気消沈などが現れます。

 

⑤恐驚と腎は関係が深い

恐怖や驚きが大きいと腎を弱め、足腰の弱り・めまい・耳鳴り・排尿異常・精力減退・不妊などを起こしやすくなります。逆に腎が弱ると、健忘・不眠・更年期症状・老化現象などが現れます。

もう少し解説しますと…東洋医学では意識や精神活動の中心は心であると考えます。また、精神活動の栄養源は腎と脾の働きで作られる血(けつ)であり、心の精神活動を推進・調節をするのが肝なのです。さらに脳は腎・心・肝が密接に関連して運営維持していると考えます。すなわち、精神活動や感情・思考は、脳や自律神経だけの活動ではなく、すべて五臓とリンクしていると考えるのです。

 

厚生労働省は今後、がん・脳卒中・心臓病・糖尿病の4大疾病に、患者数が増加している精神疾患を加え5大疾病とするそうです。西洋医学では精神疾患(脳や神経系の問題)と肉体疾患はまったく別物と考えますが、東洋医学では心と体は繋がっている(一体である)と理解するため、精神疾患では必ず五臓を調整し、また肉体的疾患でも必ず感情の安定を図るように注意します。

五臓と感情2

西洋医学ではこころの病は脳や神経系の問題で、内臓病変等の肉体疾患とは別物と考えて対処します。具体的には うつ・不安・不眠・イライラ・緊張・情緒不安定・焦り・悩み・怒り・興奮・動悸・パニック・妄想・思考障害・気力低下・神経症・物忘れ・痴呆 等の症状は、抗うつ薬・抗不安薬・抗精神病薬・睡眠薬など脳や神経伝達物質に作用する薬を用いて治療します。

一方、東洋医学ではこころと体は繋がっている…精神的な症状は肝・心・脾・肺・腎の五つの臓器と関係があると考えます。五臓とは肝臓・心臓・脾臓・肺臓・腎臓の内臓機能だけを指すのではなく、より広範囲な生命活動機能を含んだ漢方独特の概念です。

 

肝は西洋医学では栄養代謝や解毒を行う臓器ですが、漢方では気血の流れや内臓の働きをスムーズにし、血を蓄え、筋肉や目の機能を助ける臓器と考えます。
さらに理性・判断・実行力を保ち、気分をのびやかにする働きがあるので、肝が弱いとゆううつ・意欲低下・決断できない・迷いが、過剰に働き過ぎると完全主義やイライラが出るようになります。

 

心は西洋医学では血液を全身に送り出すポンプですが、漢方では血を全身に巡らせ、全身の組織や器官に栄養を与え、舌や血管の機能を維持する臓器と考えます。
さらに五臓全体の精神活動(感情・思考・意識・判断)を統括する働きがあるので、心が弱いと不安・迷い・消極的・臆病・夢が多い・不眠が、過剰に働きすぎると興奮・躁状態・発作的行動が出るようになります。

 

脾は西洋医学では血液の新陳代謝や免疫に関わる臓器(脾臓)ですが、漢方では飲食物を消化吸収してエネルギーを生み出し、口や手足を丈夫にし、出血や内臓下垂を防ぐ臓器(脾胃)と考えます。
さらに思考力・好奇心を養い、精神の安定中立を保ち、五臓の調和を計る働きがあるので、脾が弱いと悩み・迷い・主体性や一貫性がなくなる・意欲低下が、過剰に働きすぎると移り気・落ち着きがない・せっかちになります。

 

肺は西洋医学では呼吸によりガス交換を行う臓器ですが、漢方では呼吸で得た気と脾で生成したエネルギーを全身に供給し、水分代謝を調節し、皮膚や鼻の機能を維持し、身体を防衛する臓器と考えます。
さらに気遣い・五感(聴覚・視覚・嗅覚・触覚・味覚)や運動能力を保つ働きがあるので、肺が弱いと感受性低下・運動能力や反射神経低下・注意力散漫に、過剰に働きすぎると落ち着きがない・心配性になります。

 

腎は西洋医学では老廃物から尿を作る臓器ですが、漢方ではホルモンの働きをし、脳髄・骨髄・骨格・関節・内臓・生殖器・毛髪の成長・発育・老化に関わり、水分代謝と排尿機能を維持し、足腰や全身の運動力・活動力を高め、耳の機能を助ける臓器と考えます。
さらに信念や意志を保ち、根気や根性など精神の強靱さをつくるので、腎が弱いと根気や忍耐力がない・警戒心や恐怖心・決断力低下が表れます。

 

また感情では肝は怒りと、心は喜びと、脾は思慮と、肺は悲憂と、腎は驚恐と関係が深いと考えています。
さらに精神活動の栄養源である血(けつ)の生成には脾・肺・腎が、感情のコントロールには肝が、脳の機能維持には肝・心・腎が深く関わります。

このように、こころ(精神・感情・意識・思考)は五臓すべてに存在しており、五臓が不調になるとこころの病気を引き起こすのです。

 

漢方ではこころを抑え込むことなく、精神的な症状と身体的な症状からどの臓器が弱っているかを見極め、その臓器を正常にすることで精神症状を改善させていきます。同時にこころと体を繋ぐ自律神経の働きを改善することと、こころの不快症状自体を和らげることも大切です。

 

*漢方薬の継続服用が最大の養生法です
*血(精神活動の栄養源)を生み出す食事は大切です
*生活リズムを整えると自律神経が安定します
*毎日の運動で血流・新陳代謝・精神代謝が改善します

脾胃の話

コラム「五臓と季節」で「土用に脾が弱りやすい」と書きましたが、もう少し詳しく解説いたします。
土用とは立春・立夏・立秋・立冬前の18日間を指します…要は季節の変わり目だと考えて下さい。梅雨から夏にかけての高温多湿の時季も土用です。
脾は五臓のひとつで、五腑である胃とともに脾胃とも呼ばれます。現代医学では胃腸(に肝臓の働きの一部を含んだもの)だと考えて差し支えありません。

脾(胃)には以下の働き・特徴があります。

①運化と昇清を行なう

運化とは飲食物を消化・吸収・代謝して栄養や血液に変える働き、昇清とは栄養や血液を体の上方へ運んだり、内臓の位置を支える働きのことです。
脾が弱ると、運化ができずにゲップ・吐き気・嘔吐・食欲不振・胃不快感・胃痛・腹痛・下痢・便秘・帯下・むくみなどが、昇清できずに疲労倦怠・貧血・めまい・頭重・無気力・内臓下垂・脱肛などが起こります。

 

②口・四肢・肌肉を支配する

脾は口・四肢・肌肉と関連が深く、これらの箇所に栄養を送って正常な働きをサポートしています。
したがって、脾が弱ると口内炎・味覚障害・手足の脱力感・皮膚のくすみや肌荒れ・シミ・顔や手足のむくみ・慢性の皮膚病などの症状が表れます。

 

③血液を統括する

血液が血管から漏れないように制御しています。
したがって、脾が弱ると皮下出血(青あざ)・鼻血・血尿血便・不正出血などが起こります。

 

脾にはいくつか弱点があり、そのひとつが湿度に弱いことです。雨や多湿な気候、水分過剰摂取などで体内の湿気が多くなりすぎると正常な働きができなくなるのです。もうひとつは「思(悩みや心配事)」に左右されることです。多忙やストレスなどで悩みや心配事が多いと脾は弱ってきます。
脾が弱ると①~③の働きができなくなり症状が表れるのです。また脾が弱ることによってストレスに弱くなったり不安・不眠を起こしやすくなります。

 

《こんなことに気をつけましょう》

*運動で発汗して余分な水分を体外へ
*発汗後の水分は温かいもので適量だけ補給
*食事はよく噛んで唾液を混ぜる(早食いしない)
*胃液を薄める食事中の水分摂取は控える
*米・煮野菜・魚・豆腐・大豆・小豆・ゴマなどを積極的に摂り、生もの・果物・生野菜を摂り過ぎない
*脂っこい~味の濃いものは控えめに(薄味が基本)
*夜間は体を休め、過飲食や考え事(仕事)は控える
*睡眠で内臓も休養を(理想は午後10時から午前6時)

脾を弱めると胃腸症状だけでなく、倦怠感・皮膚の炎症・出血症状・精神症状そして免疫力低下が起こります。特に梅雨から夏にかけてはしっかり脾を守り、上記症状や夏バテから心身を守りましょう。

 

【参考までに…】

ベルナルド・ベルトルッチ監督の名作映画「ラストエンペラー」には、黄色い裏地の衣服を着ていた実弟溥傑(ふけつ)に対して、幼い皇帝溥儀(ふぎ)が「黄色は皇帝の色だからお前は着てはいけない!」と注意する場面があります。
五行では黄色は脾であり、大地を表します。五臓のひとつとして他の四臓と協働して働くときには、臓器は肝・心・脾・肺・腎の順に円環状に描かれます。しかしながら五方(方位)で並べた場合、脾は他の四臓の中心に配置されます。これはすなわち脾に他の四臓すべてを統べるという重要かつ貴い働き(まさに皇帝)があるということを表しています。溥儀の主張の根本には五行思想があったのです。

ぢの話

痔(ぢ)はとても身近な病気です。日本人の3人に1人はいわゆる痔持ちで、経験したことがある人まで含めると4人中3人(!)ともいわれるほどです。実際、店頭での病気相談で問診しているときも痔の話が出る確率は高いと感じます。また恥ずかしいということで対処が遅れ、悪化してしまってからの相談が多い病気でもあります。

痔のタイプと症状は大きく分けて3つです。

1)肛門内外にいぼ状の腫れができる痔核(いぼ痔)
2)肛門内部の粘膜が切れて出血する裂肛(切れ痔)
3)肛門内の窪みでたまった膿が肛門外側に通じた穴から出てくる痔ろう(あな痔)

 

患者数はいぼ痔>切れ痔>あな痔の順ですが、いぼ痔・切れ痔では歯状線から下にできるものは痛みが強く、歯状線から上(直腸内…知覚神経なし)にできるものはどんなに腫れても出血しても痛みがないという特徴があります。あな痔は、いぼ痔や切れ痔を繰り返したり腸内環境や免疫力が低下することにより化膿が常態化する特殊なケースです。

肛門に症状が出る痔ですが、実は痔はお尻の病気ではありません。痔の根本的な原因は…
①肝臓の疲れ ②胃腸の弱り ③便秘または下痢 ④体の疲れ・冷え ⑤妊娠・出産 などです。

 

これらの原因が続くと消化管から肝臓へ至る静脈である「門脈」の血流が滞ります。すると門脈に血液を送り込む直腸~肛門静脈部分が鬱血して血管が腫れたり、腫れたところが破れて出血するのです。
すなわち症状が現れるのは肛門周辺ですが、その原因は①~⑤にある…ある意味、肝臓や胃腸の弱りをお尻を通じて知らせてくれているといってもいいでしょう。だから痔はお尻の病気ではないのです。

 

したがって肛門部の炎症・腫れ・出血を治療する服薬療法や外科的手術では原因がなくならないため、圧倒的に再発率が高いのです。

 

痔の根治に最も大切なのは、原因を取り除くための服薬と養生法実践の組み合わせです。
服薬は肝臓や胃腸の働きを助けるとともに、疲れ・冷え・血行不良を改善する漢方薬を土台にしながら炎症・腫れ・出血・便秘・下痢を治すようにします。養生法は飲食内容と食事方法の見直し、生活習慣と生活リズムの見直し、自律神経と腸内環境の調整が基本となります。
個人個人で異なりますので詳細は店頭でお尋ね下さい。寒い冬は特に痔が悪化しやすい季節です。どうか無理をせずご自愛下さい。

(*お尻からの出血は大腸憩室炎・大腸ポリープ・大腸がん・血栓予防薬の長期服用などでも起こります。痔を治療しても治らない場合は早めに検査を受けましょう)

耳鳴難聴について

多くの方が困っているにもかかわらず、現代医学では原因が判らず、根本治療法がないのが耳鳴り・難聴です。検査をしても異常がないのに一向に治らずキーン・ジージー・ザーザーなど不快な音が気になったり耳が塞がったようになることから、やはり脳に問題があるのではと不安が増幅して不眠やうつにまで発展し、安定剤や抗うつ剤が処方されることもしばしばです。
漢方薬局の店頭では主に40代以降、年齢が高くなるにつれて相談割合が増えていく傾向がありますが、20代30代の方からのご相談もあります。

 

《漢方での耳鳴り・難聴の考え方》

漢方では耳鳴りと難聴は密接な関係があり、耳鳴りは難聴の軽症、難聴は耳鳴りの重症と考えます。
一般に耳鳴り・難聴というと耳の病気と考えがちですが、耳は音を捉える感覚器であって、実際に音を認識するのは神経系中枢である脳なので、実際には耳と脳の両方の働きに関係してきます。

①腎の弱り(腎陰虚・腎陽虚・心腎不交)

東洋医学では耳は腎の出先機関で、腎のエネルギーが耳の機能を維持していると考えます(腎は耳をつかさどる・腎気は耳に通ず)。また脳の音声認識機能についても、腎のエネルギーが脳の機能を維持していると考えます(腎は脳髄をつかさどる・腎は脳に通ず)。
腎は成長・発育・生殖に関わったり、脳の働きを充実させたり、生命活動の原動力となる重要な臓器ですが、加齢や体力低下、病気などで腎が弱ると耳や脳にエネルギーを送ることができなくなり、耳鳴り・難聴を起こします。
腎の弱りは40代以上での発症の最大の原因といえるでしょう。ちなみに腎の衰えは男40才・女35才から始まり、腎精は男64才・女49才で尽きるとされています。これらの年齢が発症の分かれ目といえるのかもしれません。
耳の症状の他、足腰のだるさや弱り・手足の冷えやほてり・不眠・動悸なども現れます。

 

②肝の弱り(肝血虚・肝気鬱結)

肝は栄養分の血(けつ)を貯蔵しており、耳などの全身各器官に栄養を与えています。精神活動が安定していれば、血は全身に循環して耳にも栄養が届きますが、過労や栄養不足、ストレスで肝が弱ると耳に栄養が届かず、耳鳴り・難聴が起こります。また肝に弱りがあると腎も弱ってきます(精血同源・肝腎同源)。
肝の弱りは比較的若い世代で多い発症原因です。
耳の症状の他、目の不調・頭痛・筋肉の凝りや痛みなども現れます。
(肝は血を蔵す・肝は筋肉をつかさどる・肝は目に開竅す)

 

③脾の弱り(脾気虚・清陽不昇)

脾は飲食物を消化して生成した栄養物質を全身に運ぶ(脾は運化と昇清をつかさどる)ので、耳にもエネルギーを供給しますが、疲労や胃腸虚弱で脾が弱ると耳に栄養が届かなくなり、耳鳴り・難聴が起こります。
脾の弱りは年代に関係なく見られる発症原因です。
耳の症状の他、全身倦怠、食欲不振、軟便下痢なども現れます。

④耳竅の閉塞

耳鳴り・難聴が続くと耳竅(じきょう…耳と腎を通行させる通路)が目詰まりを起こして気血(栄養)が耳に届かなくなり、耳鳴り・難聴が長期化するとともに①~③を改善する漢方薬の効きめも悪くなってしまいます。

このように耳鳴り・難聴では、耳(症状が現れる場所)よりも全身(原因となる場所)の症状を重視します。

実際の選薬では病理タイプを見極めたうえで…

①腎の弱り ⇒補腎薬
②肝の弱り ⇒補血薬、疏肝薬
③脾の弱り ⇒補脾薬
から基本薬を選択し(①~③の複合パターンあり)
④耳竅の閉塞 ⇒開竅薬
さらに④を併用するのが症状改善のコツとなります。
詳しくは店頭でお尋ね下さい。

(補遺)
今回の健康コラムは漢方の専門用語がたくさん出てきて少々難しかったかもしれません。ただ、耳鳴りや難聴は比較的よく見られる症状であるにも関わらず、理解されていない部分が多いので掲載してみました。
例えば「聡明」という言葉がありますが、これは元々「聡耳明目(そうじめいもく)」という漢方用語を簡略化したものです。聡耳明目とは聞いたことや見たことをしっかり理解でき、その背景にまで考えが及ぶという意味ですが、元々は、耳は腎の出先機関、目は肝の出先機関なので、聡耳明目であるためには肝・腎の充実こそが重要であるという深い意味があるのです。昔の人はほんとに聡明ですね~。
ちなみに、漢方薬には益気“聡明”湯や滋腎“明目”湯という処方が実際に存在しています。

上薬・中薬・下薬

めまい・耳鳴・動悸・不眠で漢方滋養強壮薬と処方薬を服用していただいた70代の女性の実話です。
訴えの症状が消失してからは漢方滋養強壮薬のみを継続、ここ2年はしょっちゅう引いていたカゼも引かなくなったと喜んでおられたのですが、実妹が亡くなったショックで前回来店時には、もう長生きしたくない、誰にも迷惑をかけたくない、だから「漢方薬を飲まない方がいいでしょうか?」という質問を受けました。
私は少し考えて次のようにお答えしました。

「寝たきりになったらご自分もご家族も大変でしょう? 漢方薬を服んでいると内臓を守れるし血管の老化も予防できるから、家族に迷惑をかける心配が減りますよ。それに普段元気だと入院や介護なしでおだやかに旅立てるかもしれません。あちこち故障のまま生きて介護されるよりも、漢方薬を服んで元気にピンピン生きてコロリと逝きませんか」

平均寿命に含まれる介護期間(平均で約11年)を短縮して健康寿命を伸ばすには、以下の3点が大切です。

①新陳代謝に必要なタンパク質中心の食事
②運動機能を維持するための筋肉運動
③五臓の働きを常に上薬で補い労る(特に補腎)

生薬や漢方薬は主に3つに分類できます。

上薬…無毒でいくら長く用いても副作用がなく、元気を増し、生命を養うことができるもの
中薬…体力を補い、病を防ぎ、治療に役立つが、用い方によっては有害になるもの
下薬…症状に対してよく効くが、毒性を有し長く続けるとよくないもの

先の女性は五臓(特に肝・腎)の不調が原因で、結果として各部(目・耳・心臓・神経)に症状が出ていたため、原因療法に漢方滋養強壮薬(上薬)、症状改善に漢方処方薬(中薬)を服用していただき、症状が改善してからは体質維持・再発防止・健康寿命の延伸を目標に上薬のみ服用を続けていただいておりました。
だからこそ、前述のような回答になったのです。

店頭でのご相談の際には、漢方薬の種類と服用の意味、そして養生法についてできるだけわかりやすくお話をさせていただきたいと考えています。

冷えは病気の玄関口

~冷えは誰にでも起こる。続けば免疫力が落ち、そこは病気の玄関口~

体の冷えは体質的な原因とともに、生活習慣やストレスが大きく影響します。したがって冷えは誰にでも起こりますし、冷えが続くと内臓の働きが低下して免疫力が低下したり、動脈硬化や生活習慣病、肥満のリスクが高くなるのが大きな問題です。
冷えの自覚がない隠れ冷え症の方も多いため、冷え症には客観的な判断方法があります。まず脇の下に手をはさみ、次にその手でお腹、お尻、太もも、二の腕の下側を触ります。内臓温度に近い脇の下と比べて1ヶ所でも冷たい箇所があれば冷え症です。

 

《冷え症に効く生活改善》

冷え症にならないよう体内で熱を作るには食事や筋肉量が重要です。
また、その熱を全身に運んで体の末端や表面まで温めるのは血流の役割です。

 

「食事」

・主食・主菜・副菜の定食形式で3食とる
・特に朝食は欠かさない
・卵・魚・肉・大豆・乳製品等を欠かさない(…タンパク質は筋肉のもとで熱源になる)
・雑穀・豆類・海苔・鰹節などでビタミン・ミネラル補給(…糖質・脂質を燃やす)
・根菜類・温野菜・温かいメニューを積極的に
・冷たい飲み物や夏野菜は控えめに

 

「運動」

・一日20分程度の運動習慣を
・筋肉を増やし代謝を高めるストレッチが中心
・ウオーキングは早歩き3分、普通歩き3分を交互に
・坂道、階段を積極的に歩き太股の筋肉アップ
・汗のかき過ぎに注意(…体を冷やすもとに)

 

「睡眠」

・睡眠は夜間にきちんと取り副交感神経優位に(…副交感神経優位になると血行がよくなる)
寝室は15度以下にしないこと

「入浴」

・冷えている部分を湯たんぽやカイロで温めてから入浴(…入浴効果アップ+のぼせ防止)
・湯温・入浴時間はのぼせず冷えずの最適な組合せを見つける

 

《漢方薬で冷え症のタイプ別に対策を》

東洋医学では、冷え症の最大の問題点は全身に栄養を届けて体の温かさを保つ血(けつ;血液や栄養)の不足にあると考えます。
前述の生活養生を中心にして、さらに血を補うことが冷え症の改善を大きく前進させるのです。
平素からの血の補給は、男性では循環器や肝臓を丈夫にし、女性では生理不順・更年期障害・骨粗鬆症・リウマチ・膠原病などの予防にもなります。
血の補給にはレオピン・瓊玉膏・婦宝当帰膠・婦人宝・松寿仙・亀鹿霊仙廣などの補血剤が有効です。
その上で冷え症のタイプ別に対策を取りましょう。

①疲れやすく胃腸の働きが弱いため気(エネルギー)血(栄養)も不足している気血不足タイプ

食養生…タンパク質中心にバランスよく栄養を補い、よく噛んで食べる
漢方薬…帰脾湯・補中益気湯・十全大補湯

 

②ストレスが多く気血の巡りが悪い血行不良タイプ

食養生…香辛料やスパイス・香味野菜でストレスを発散し、巡りを良くする
漢方薬…逍遥散・柴胡桂枝湯

 

③冷えが強く体が全く温まらない 陽気不足タイプ(陽気の元である腎の弱りもある)

食養生…体を温める食材や料理を中心にしてお腹を温める
漢方薬…レオピンロイヤル・霊鹿参・参茸補血丸

 

《体温と免疫力の関係》

体温が35.5℃になると、36℃台の人に比べ免疫力が60%に低下します。
冷え症でなくても、ただ単純に体が冷えただけで確実に病気に罹りやすく、また治りにくくなるのです。
免疫力は内臓力・回復力・自然治癒力と言い換えることができるものです。冬は飲食に注意して、外からだけでなく体を中から冷やさないようにしましょう。

認知症予防 ~脳を若く保つために

現在、日本の認知症患者は462万人(軽度認知障害を含めると800万人)とされています。患者数の増加に伴い、行方不明、詐欺事件、道路逆走、介護疲弊などの社会問題も噴出してきており、2025年には患者数が700万人を超えるとの推計もあります。日本人に最も多いタイプであるアルツハイマー型認知症は近年、以下のような発症の流れが判ってきました。それによると…

 

①発症の約25年前からアミロイドβが脳内に蓄積し、神経細胞の伝達を遮断する
②発症の約15年前からタウが神経細胞内で凝集し、神経細胞を死滅していく
③記憶中枢である海馬の萎縮が始まり、認知症を発症する

 

現代医学では③に至れば治療法はありません。認知症に処方される薬も根本治療にはならず、あくまでも機能改善・症状安定が目的ですし、その効きめにも個人差があります。

現時点で断言できることは、アルツハイマー型認知症は脳内のアミロイド沈着が根本的な原因であること。そして、その蓄積を抑制できれば予防はできるということです。認知症の発症まで25年程度かかるので、予防にあたってはできるだけ早い時期(40~50代)から実行することが重要です。
予防の基本は“脳細胞や神経細胞、血管、血液のよい状態を維持して、脳を若く保つ”ために日常生活に気を付けることです。
・バランスの良い食事を心がける(新しい細胞、血液を造る原材料となる)
・朝食を摂る、よく噛んで食べる(脳への刺激となる)
・運動の習慣(脳血流を改善すると海馬萎縮の防止になる)
・質の良い睡眠(睡眠中にアミロイドβを排泄する)
・読む、書く、計算、会話を心がける(五感を働かせることが重要)
・読んだり見たりしたことを書いたり説明する(記憶を定着させる訓練になる)
・認知症の引き金になる高血圧、糖尿病にならない、またはコントロールする

 

一方、東洋医学では物忘れや認知症は、以下の三つの臓器と関係が深いと考えます。

①脾 …気・血を生成し、精神活動の土台になる
思慮や意志、感覚器官の働きを強くする
②腎 …感覚・思惟・記憶などの脳活動を生み出す
③心 …血液循環と精神・意識・思惟活動をコントロールする

 

予防の段階では、特に脾(胃腸)を丈夫にしておくことが大切です。食べたものからしっかり気血ができれば気力が出て元気になる、他の臓腑が丈夫になる、気の滞りや血の不足がなくなるからです。
また認知症は大病・慢性病・精神病の後に現れやすいと考え、普段の体調や持病の管理やストレス対策を重視する点は現代医学と似ています。

 

認知症については以下の分類もあります。

 

文痴(ぶんち)…無表情、反応鈍い、運動障害(不活動タイプ)
武痴(ぶち) …興奮、徘徊する、怒鳴る、物を壊す(活動タイプ)

 

脾・腎・心・文痴・武痴…それぞれのタイプに応じて店頭では漢方製剤をオススメしています。